遭遇 ページ9
翌月。
杯戸町のある駅のプラットフォームには、
ベースを抱え、嬉しそうな顔を浮かべた女の子の相手をする景光の姿があった。
その隣では、
ニット帽をかぶった長い黒髪の男が、何やらため息をついている。
そして、長髪の男は女の子と会話を交わすと、
切符売り場の方へ向かった。
「こうやって…、ド、レ、ミ、ってな…?」
「…スコッチ。」
楽しそうに女の子の相手をする景光の後ろから、
たしなめるように声をかけたのは、
黒い帽子を目深にかぶり、褐色の肌を携えた長身の男。
帽子の端からは、柔らかそうな金色の髪が覗いていた。
――――
『…はい。今、米花駅方面のホームです。
おそらく、睨んだ通り米花駅で落ち合う予定じゃないかと――
…現場の確認をお願いします。』
そして、向かい側のホームに現れたのは、
スマホを手に小声で会話を交わすAだった。
Aの視線の先には、
1週間前から追っている成りすまし詐欺のメンバー。
保険会社の社員に成りすまし、金銭の受け渡し役となっていると思われる男。
そして、男がベンチに座るのを確認すると、
さりげなく同じホームで電車を待つフリをしながら、向かいのホームへ視線を移した。
(…諸伏…と…、零…?)
目に入ったのは、中学生くらいの女の子に教えるように、
楽しそうにベースを弾いている景光。
そして、その横の、帽子を目深にかぶった長身の男。
顔ははっきり見えないとはいえ、見間違うはずがない。
そして、そこに合流するようにして現れたのは、
長い黒髪を携えた、同じく長身の男。
ニット帽をかぶり、景光と同じようなギターケースを背負っている。
(…誰?)
見知らぬ人物に、そして、降谷と、景光との思わぬ遭遇に、
しばし眉をひそめたものの、
Aはすっと視線を外すと、
少し先のベンチに座るターゲットの男に、再びさりげなく視線を戻した。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月17日 12時