差し出された傘_2 ページ14
『…やっぱり。』
警視庁から1分ほど車を走らせた路地。
路肩に車を止めると、
Aは傘を手に、小さなビルの入り口へ近づいた。
そこに立っていたのは、
タバコをふかしながら、眉をひそめて空を眺めている松田だった。
『こんなところで雨宿り?』
松 「…春宮?」
『…非番なの?』
松田は、近づいてくる人物に少し驚いた様子を見せるも、
のんびりと煙を吐き出した。
松 「まぁな」
『何だか松田、いつも非番な気がするんだけど』
松 「…は?」
前に会った時も非番だった、というだけだ。
それも半年ほど前、萩原の命日の日なのだが。
『梅雨なんだから、傘くらい持って出なさいよ』
松 「…さっきまで降ってなかっただろ。
近ぇし、ちょっとそこのコンビニに来ただけなんだがな…急にここまで酷い雨になるとはな。」
『…はい。』
松 「は?」
傘を差し出してくるAに、
眉をひそめて、すっとんきょうな声をあげる松田。
『寮まで送ってくけど。』
松 「…は?」
送っていくと言いながら、自身が差してきた傘をぐいっと差し出すA。
何のことやらよく分からない松田は、眉をひそめたままだ。
『車、あっちだから。』
松 「…え、いや…」
『あ、ごめん。それともここでタバコ吸ってたかった?』
言葉だけ聞けば、ずいぶん嫌味に捉えられそうなものだが、
無理強いするつもりはない、というだけだ。
Aは至って普通の表情をして、松田に問いかけている。
傘を差し出したままで。
残念ながら、Aはそんな器用な嫌味が言える人物ではないのだ。
209人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:white12 | 作成日時:2019年11月17日 12時