疑い_4 ページ13
「香坂さんは、彼、桜田さんとお付き合いしていたんですよね?」
『…松田刑事にもお話しましたが、結婚しているなんて知らなかったんです。』
「でも、彼と口論していたのは事実なんですよね?松田く…、松田刑事の話では、
彼の頬を叩いていたとか。かなり彼を憎んでいたようですが」
『だから…、結婚しているなんて知らなかったので、ちゃんと話をしようとして。
結果、口論はしましたけど、
彼の頬を叩いたのも事実ですけど、私はそれでもう終わったと思ってます。
知らなかったとは言えそういう関係だったこと、心底悔しいと思っているんです。
もう、関わり合いたく無いと思っていました。
だから彼とはあの夜、えっと…5日前の夜、会ったきりです。事件のあった日は、会っていません。』
「…そうですか。」
そのセリフとは裏腹に、佐藤がAに向ける視線は厳しくて冷たいものだ。
自分に似ている容姿の女性が犯人だという目撃情報。
貴方を疑ってますよ、と言わんばかりの佐藤と、
午後の日差しのせいか、いつの間にかサングラスをかけている松田の雰囲気に、
Aは更に呼吸が浅くなるのを感じた。
お仕事中にすみません、などと配慮したセリフを吐いていた佐藤も、
やはり刑事というべき威圧感をまとっている。
後ろめたいことなど、決して無い。
とは、どうしても言い切れないからだろうか。
知らなかったとは言え、結果的に不倫していたのは事実なのだ。
Aは、佐藤と松田から一瞬視線を外し、悔しげに表情を歪めた。
しかし、身に覚えのないことで疑われるわけにはいかない。
明確なアリバイがないとは言え、桜田を刺したなどあり得ないのだ。
その後も、佐藤や松田からの事情聴取に、Aは毅然とした態度で受け答えをすると、
仕事があるので、と、10分ほどで店に戻って行った。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月12日 20時