あの日のベンチ_3 ページ3
景 「――別に、手を抜かれた訳じゃないと思うぞ?
ゼロは…」
『…でも、本気じゃなかったのは事実なんでしょ。
そんなの、勝負じゃないわよ』
景 「ゼロは言葉足らずだからなぁ。
ちゃんと話してみれば良いと思うけどな」
『…手を抜いた理由なんて、知ってどうするのよ』
ベンチに腰掛け、
並んで言葉を交わす2人。
降谷はその場にいない。
そして、降谷から、Aに対してどう思っているのか聞いた訳でもない。
先ほど言おうとした核心に迫った言葉は告げず、
手加減された、という訳じゃない、
ということを分からせようとする景光。
話してみれば良い。
それは、前に降谷が萩原に言われたことと同じ言葉だ。
景光はそれを知る由もないのだが。
景 「だから――」
『もう、良いから」
景 「…え」
『降谷との勝負にこだわってたのは否定しないけど、
別に、もう良いから』
Aは、
冷静になった様に諦めた様に、淡々とした表情を浮かべていた。
景 「…でも」
『警察学校生じゃなくても、
降谷じゃなくても、
警視庁にはもっと強い人はいるんだし。
強くならなきゃって思うけど、降谷との勝負じゃなくても――』
景 「でも、ゼロから1本取りたいって言ってただろ?
春宮。昨日の夜だって、手、震えてたのに、ずっとその話してただろ」
『…そ、それはそうだけど』
景 「なのに手加減されたなんて思ったら、悔しかったんじゃないのか?」
『…だから、もう良いって言ってるじゃない。』
何故か、口調を強める様に詰め寄ってくる景光に、
困った様にAは視線を逸らせた。
景 「ちゃんとゼロと話した方が良いと思うぞ。
ゼロだって――」
『…なんで諸伏がそんなこと言うの?』
景 「え?」
『降谷の話でしょ?
なんで諸伏がそんな風に詰め寄ってくるの?』
呟く様に、
今度は静かにAが反論する。
景 「…それは」
『良く分からない。
もう良いって言ってるでしょ。気にしないで。』
景 「春宮。
だから、ちゃんと――」
『話って、それだけ?
それじゃ――――
…え?』
淡々とした口調で言葉を零し、
すっとベンチから立ち上がり、その場を去ろうとしたAだったが、
突如、小さく戸惑う様な声を漏らした。
昨夜のように。
215人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
white12(プロフ) - ra -ra さん» コメントありがとうございます。SNOW DROPは,拙いながらも私自身けっこうお気に入りでして,警察学校組好きが溢れた作品でした。お楽しみ頂けていたなら本当に嬉しく思います。 (2021年5月26日 21時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
ra -ra - やばい。何度読んでも面白い! (2021年5月18日 16時) (レス) id: 4001d860f3 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 燎彩さん» とても嬉しいコメントありがとうございます!最高と言っていただけて本当に嬉しいです。長くはなりますが、続編 (II)も更新中ですので、もし宜しければお楽しみ頂けますと幸いです。 (2020年1月23日 13時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
燎彩(プロフ) - 完結お疲れ様でした!語彙力皆無なので一言だけ…最高です!! (2020年1月22日 11時) (レス) id: c873624ead (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - さちさん» 本作をお読み頂きありがとうございました。面白かったと感じていただけてとても嬉しいです。もしよければ続編もお楽しみ頂ければ幸いです。 (2019年11月18日 23時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:white12 | 作成日時:2019年9月1日 9時