勘違い_3 ページ19
『また、好きだって言われた。
そう、言ってくれた。』
“そう、言ってくれた”
そんなセリフは、数ヶ月前のAなら考えられない言葉だ。
“思ってもないことなんて、口に出来ないし、それが良いことだとは思わない。”
もっと良い断り方があったんじゃないのか。
そう言われた萩原に、文句を言った数ヶ月前とは違い、
ほんの少しは、向けられた好意に、
ほんの少しだけは、井上の好意に、ちゃんと向き合うようになったということか。
降谷と、景光と色々なことがあったこの2週間。
Aとて、何も考えていなかった訳じゃない。
いや、この2週間というわけではなく、
降谷たちと、塔子たちと関わる様になったこの数ヶ月で、
Aの感情的な部分が確実に変化していることは、確かだった。
『彼には前にも同じ事言われたけど、
そのときは彼のこと何も知らなかったけど…
今は、彼の名前も知ってるし、何度も話した事もある人だし。
でも、そんな風に考えた事なんてないから。
断ったわよ。』
降 「…」
『…気になって仕方ない人がいるから。
イライラするのよ』
降 「…は?」
苛立ちを抑える様に、小さく息を吐くAに、
降谷は理解が追いつかない。
『…何なのよ。
私だから、手加減したとか…
分からせようとしたとか…』
降 「…」
『意味分からないのよ…
回りくどいって言ってるの』
苛立ちを整理できない様に、
徐々に声が小さくなるA。
その表情は、少し苦しそうに目を閉じている。
少しずつ弱々しくなるその言葉に、降谷は反論することが出来なかった。
『…何なのよ。
イライラして、思考がまとまらないのよ。』
降 「…」
『…降谷に、手加減なんか、して欲しくなかった。
あんな風に、ベンチに押さえつけられて、
訳が分からなかった…。
熱があったなんて、降谷にバレたくなかった…』
苛立ちを吐き出す様に、
地面を見つめながら、小さな声でポツリポツリと話すA。
その目の前で、降谷は目を細めていた。
ヒートアップしかけていた自身の感情が、
まとまらない感情が、
Aの苦しそうな表情を前に、すっと冷静になる感覚があった。
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white12(プロフ) - ra -ra さん» コメントありがとうございます。SNOW DROPは,拙いながらも私自身けっこうお気に入りでして,警察学校組好きが溢れた作品でした。お楽しみ頂けていたなら本当に嬉しく思います。 (2021年5月26日 21時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
ra -ra - やばい。何度読んでも面白い! (2021年5月18日 16時) (レス) id: 4001d860f3 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 燎彩さん» とても嬉しいコメントありがとうございます!最高と言っていただけて本当に嬉しいです。長くはなりますが、続編 (II)も更新中ですので、もし宜しければお楽しみ頂けますと幸いです。 (2020年1月23日 13時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
燎彩(プロフ) - 完結お疲れ様でした!語彙力皆無なので一言だけ…最高です!! (2020年1月22日 11時) (レス) id: c873624ead (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - さちさん» 本作をお読み頂きありがとうございました。面白かったと感じていただけてとても嬉しいです。もしよければ続編もお楽しみ頂ければ幸いです。 (2019年11月18日 23時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2019年9月1日 9時