10年越しの再会_2 ページ49
結子に連れてこられた墓地は,杯戸町から電車で30分ほどの離れたJ町にあった。
元々若宮家は,結城家と同じく,杯戸町に暮らしていたが,
10年前の事件後,若宮家は杯戸町を出て,J町で暮らし始めた。
引っ越しの際,
新しい家の場所、そして隼人の墓の場所は聞いていたものの,
葵が足を運ぶのは初めてだった。
あの交差点に手を合わせることしか、出来なかったのだ。
自分を許せない罪悪感からか,
葵がそこに赴くまでに10年もの月日がかかったということだ。
目の前の若宮家の墓。
そこに,隼人が眠っている。
「隼人,葵ちゃんが来てくれたわよ…。」
「ただ,ぼんやりしてしまっていただけ,だって,そう思うの。
あの子は,確かに弱いところがあったけど,自らそんなことを選ぶ子じゃないって,信じてるから。
そう思えるようになるまでにも,ずいぶんかかったんだけど…ね」
手を合わせる葵に,
目尻を赤くして,裕子がつぶやく。
葵は,何も言えなかった。
本当のことは,本人にしか分からないのだから。
『おじさんは…,真人くんは,元気ですか?』
「えぇ。朝,あの人も真人も,一緒にここに来たの。
交差点にも行ったんだけど…
ちょっと考え事したくて,ね。
あの時,隼人が何を考えてたのか,どんな気持ちだったか。私だけ,近くを歩きながら。
あの時と同じように,一人で大丈夫,って笑って2人には先に帰ってもらって,ね。
そうしたら,手を合わせる葵ちゃんが見えたから…」
『連絡もせずに,本当に,ごめんなさい…。』
「ね,もう他人行儀なの,よしましょう?
昔みたいに,…
って,それは,難しいわよね…
私の方こそごめんなさいね。」
葵は小さく首を振る。
『ううん。おばさんには,本当のお母さんみたいに良くしてもらって,
おじさんにも,真人くんにも,
なのに…
って,思ってます。
でも,色々ありすぎたあの数年から,
今でも全て整理がつけられていないみたいで…
もう少しだけ,時間が,欲しいです』
そう。
葵にとっては、その4年後に父親を失うという事件もまた、大きな傷となり、心の中を上手く整理仕切れず、進めずにいた。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月1日 21時