バックヤード_2 ページ30
『事件自体、ではなく、木本さんについて教えていただきたいのですが。
1ヶ月ほど前までこちらで働いていたんですよね?』
葵はそう話しながら、バックヤードの椅子と壁に複数の深い傷が付いていることに気がつく。
「あぁ、そうだよ。で、急に辞めたんだ」
『辞めた理由について、心当たりは?』
「ないよ。諸事情だとかで辞めたいって言ってきただけだ」
『そうですか…。
…それと』
「あの、この店ってけっこう古いんですか?この部屋、けっこう年季が入ってるような…」
そう続けようとする葵の言葉と同時に、店長に尋ねた神山は、
「あ、すみません」
と、小さく葵に謝罪する。
「あー3年くらいかな。」
『3年ですか。
その、壁や椅子の傷は、荷物を運んだりする際についたものですか…?』
気になっていた目の前の傷を指差して葵が尋ねる。
「…!あ、あー、たぶんそうだよ。コンテナ運ぶときに、ぶつけたやつだろ」
店長の口調がわずかに変化する。
椅子は回転式だ。
ぶつけたといっても、深い傷がつくようなことがあるだろうか。ぶつけた拍子に倒れることもあるだろうが。
「と、とにかく、木本が辞めた理由は知らないし、
強盗だってあいつがやったんだから、もう話すことはないでしょう。」
傷がついた経緯は不明だ。
それよりも、気になるのは店長の態度だったが、これ以上話は聞けそうにないと思った葵と神山は、バックヤードを後にした。
しかし、
「…ったく、あんなクズ、さっさと…」
部屋を出る間際に店長がつぶやいた言葉を、葵は聞き逃さなかった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月1日 21時