検索窓
今日:33 hit、昨日:9 hit、合計:110,384 hit

警視庁にて_3 ページ13

「わざわざ来ていただいてすみません!仕事は大丈夫ですか?」

葵が警視庁の受付で事情を話すと、昨夜の高木という刑事が元気良く現れた。

「確か、弁護士さんでしたよね」
『はい。茅野法律事務所に勤めています。警視庁には仕事で何度か。』

「そうでしたか。いや、しかし昨晩は大変でしたね。お怪我がなくて良かったです!」

こちらです、と良いながら、高木はエレベーターの方へ葵を誘導する。

チン、と小気味良い音とともに開いた箱の中に乗り込むと、
わずかにタバコの匂いがした。
刑事には喫煙者も多い。残り香だろう。

5Fに着くと、

「こちらです。」

と、高木は葵を突き当たりにある部屋へと連れていく。


「そんなにお時間は取らせませんが、昨晩のことを詳しく―――」

プルルルル

高木が話していると、高音の着信音が廊下に響いた。

「あ、ちょっとすみません!――はい、高木」

電話ごしに誰かと短い会話をし、すぐに電話を切ると、

「申し訳ないのですが、角の右の部屋で少し待っていて頂けますか?すぐに向かいますので!」

そう言って高木は走っていってしまった。


(角の右の部屋…)

葵が高木に言われた部屋に向かっていると、

「だから!俺はやってねぇ!!!何にも知らねぇんだって!」
後ろから大きな声が響いてきた。

振り向くと、エレベーターから、腕を後ろ手に掴まれた若者と、
彼を拘束している一人の刑事。

革ジャンにメッシュに染めた髪といういでたちの若者は、
叫びながら体を捻って拘束を解こうとしている。

何か事件の容疑者だろうか。

警視庁に来ればこういった光景も珍しいものではない。

「あーあー分かった。
まぁ、詳しい話はあっちの部屋でじーっくり聞かせてもらうからな。」

なだめるような口調ではあるが、好戦的な態度の刑事。

“じっくりいたぶって吐かせてやる”
ドラマでよく聴くセリフが今にも飛び出しそうな光景だ。

面識もない、事情も全く分からない状況ではあるが、
若者を拘束したまま、こちらに歩いてくる刑事に、葵は鋭い視線を向けた。

刑事は、ちらりと葵を一瞥し、
若者を廊下途中の部屋へと連れて行った。


その光景を見ながら、

(「俺はやってない!何も…何も知らないんだ!」)

何度も何度も聞いた言葉が、頭に浮かび、
葵は表情を小さく歪めた。

(隼人兄 (に)ぃ …)

警視庁にて_3→←警視庁にて_2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.2/10 (50 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
105人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:white12 | 作成日時:2019年7月1日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。