犬神と白稚児 ページ26
◆
救急車の音が、遠くに聞こえる。
今日も何処かで、俺達の知らん間に、何かの事件が起きている。
そして俺たちは、公園を後にした。
呪いの媒体は、とりあえず消滅した。
あとは、本体をどうにかするだけ。
ただ、気になることは。
公園を出て、少ししてから気付いてた。
俺らの後ろをついてくる、誰かの気配。
淳｢・・・・・・照史、｣
照｢うん、分かってる。｣
お互い頷き、目で合図する。
照｢捕まえた。｣
直後、照史は一瞬のうちに姿を消す。
そして振り返れば、本来の狐の姿に戻った状態で、誰かに巻き付いていた。
淳｢キミさ・・・さっきから、俺らの後をずっとつけてたやろ？｣
？｢・・・・・・・・・、。｣
巻き付かれた勢いで、倒れ込んでる相手。
この辺りの高校の制服を身にまとった男の子。
その整った顔の左側には、痛々しい火傷の痕。
そして、全身はうっすらと透けている。
淳｢・・・おばけ、か。｣
？｢・・・はい？ 何言うてるんですか？｣
少し怯えている様子の男の子は、“おばけ”という言葉に反応した。
全く心当たりが無いというか、意味が分からへん、っていう表情。
？｢あの、それよりアナタ・・・≪怪異探偵≫さんですか？｣
淳｢そう、やけど・・・｣
？｢実は最近、事故によく遭うようになって・・・もしかしたら、何かに取り憑かれてるんやないか、って、みんな言うてて・・・それで・・・｣
淳｢・・・・・・・・・、｣
あぁ、そういうことか。
この子は、きっと。
自分が死んだことに、まだ気付いてへんのや。
気付けば、救急車の音は止んでいた。
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