プランツ・ドール Daiki. S

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「私が嫌なら、出てけば」



ほらな。これやもん。



「ほんま、正直やってられへんわ。じゃあな、A」


「うん、じゃあね、」



声、震えてもうてるし。

ほんまは嫌なくせに。



「なあ、そろそろその思うてへんこと言うクセやめろや」


「別に、本心だけど」


「やったらほんまに出てってええんか。金いくら積んでも、俺はこの前みたく生き返らへんぞ」



Aは何も言い返せへんくなったらしい。

無言になって、沈黙が続く。

ほんま素直やないなあ、もう。



「…ご、」



Aがおもむろに、口を開く。

この瞬間、いつも急かしてまいそうになるんやけど。

でも、じっくり待たなあかん。



「…ごめ、ん」


「うん、俺こそごめん」




長い前髪の隙間から、ちらちら俺の顔色をうかがって。

ほんまは嫌われたないくせに、可愛い。



「A、戻ろ？」



にっこり、笑窪が出るように。

Aがちゃんと安心するように。



「…うん、」



Aの手を引いて立たせ、そのまま手を繋ぐ。



「言うておくけど、俺は好きやから。Aのこと、めっちゃ大好きやから」


「…そう、」



かあああって、顔赤くして。

隠すように慌てて俯いて、私は別に、て。

もう、素直やない。それが可愛い。



「A、仲直りのちゅー」


「調子乗らないで」



そう言うけど、ちゃんとさり気なく目ぇ瞑ってくれてんねん。

立ち止まっては、くれへんけど。

やから立ち塞がるように立ち止まらせて。

強引に、唇を奪う。



「はい、仲直り」



笑顔なのは俺だけ。

いっつもやもん、気にしてへん。



「…だいき、」

…す、き



やから、こういう不意打ちは。

逆に。逆に、あかん。



「っ、Aっ、もっかい言うて！」


「耳、悪いの？もう言わない」



ああ、もう。

またそうやって俺を惚れさせて。

小悪魔過ぎて、ほんま困るわ。

耳真っ赤にして、俺の手を引いて歩く。

可愛い、めっちゃ可愛い！



「A、今日は何食べたい？」


「オムレツ。形が綺麗じゃないと食べない」


「分かった！」



きっと、俺に見えへんように。

小さく微笑んでるんやろうなあ、て。

見えへんけど、絶対、合うてる。

Aのことなら、何でもわかる。



「食後の紅茶は何がええ？」


「だいきが選んだやつ」


「んーそうやなあ、何がええかな。迷ってまうなあ、」



にこにこ笑う俺と、あんま笑ってくれへん君と。

そんな、俺らの話。





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