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小さく息をしながら大きなベッドで抱き合ったまま。
しばらくはそこに一言も発しないまま横たわっていた。
天井を見つめているだけの彼の横顔はやっぱり綺麗で、肩に触れた指先が肌の感触を確かめるように撫でる。
いつもならこうしていてもすぐに時間が来てしまって、煙草の残り香しか彼を感じるものがなくる。
それでもまだ、怖かった。
ここがゴールではなく、物語の続きがあるのでは。
それはドラマのようになかなかうまくいかなくて、試練が待ち受けているのではないか。
これは現実だから、きっと平凡な時間が過ぎるだけだと信じてはいるのだけど。
「夜間飛行するために、妻の止める声を聞かないで暴風雨の中飛行機を飛ばした夫の話、知ってる？」
「ううん…どうして？」
「あなたに会えるのは、晴れた夜空の月が出ているときだけ。最初は何も意識していなかったんだけど、火曜日になるたび会社の窓から空を見上げるようになって思ったんだ」
翔くんはぼんやりと赤みがかった天井に向かって手を伸ばした。
「雨の中月を見に行くことは普通に考えて不可能。でも、俺は家を出た。そして、二度と戻らなかった」
「その月が、俺ってこと…？」
「そんな存在だと、自分でも思わない？」
身体を横に向けて、親指の先を頬に触れさせた。
俺が月なら、翔くんは太陽、と呼ぶのが普通だろう。
でも、違う。
俺にとって彼は空。
居場所を作ってくれる唯一の存在。
だから、もう澱んだ煙で隠さないで。
雲がかかるみたいに、惑わさないで。
あなたを照らし続けていられる存在になりたい。
「まだ、怖い？」
そう言って、ぎゅっと頬に添えられた手を握った。
「俺の手を取るのが、怖い？」
少しだけ目線を上げて問い掛ける。
彼は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「怖いよ。でも、怖いのは智くんも同じでしょ？」
「そ、そんなこと…」
「手、震えてる」
彼の手を握ったまま口元に持っていって、手の甲や指先にキスをされた。
「好きだよ、ずっと。もう離さないから」
求めていた台詞を何気ない瞬間にこうして口にするところも、やっぱり惑わせている。
怖いよ、そりゃ。
誰だって暗闇は怖いでしょ。
だから、このままずっと包み込んでいてほしい。
俺が光り続けるには、彼が必要だから。
「…どこにも行かないで」
小さく放った一言は、この静かな薄暗い空間に溶け込んでいく。
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京(プロフ) - 碧央。さん» 碧央さん、ありがとうございます！詳細な感想までいただけて…本当に本当に嬉しいです！！まだまだ書き続けたいと思いますので、今しばらくお待ちいただければと思います！ (2021年1月24日 1時) (
レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - ゆうきさん» ゆうきさん、ありがとうございます！！細かく読んでいただけて大変嬉しく思います。続編はもう少々お待ちくださいませ！ (2021年1月24日 1時) (レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - butazch715413さん» ありがとうございます、そう仰っていただけて本当に励みになります！続編は書く方向で進めますのでもうしばらくお待ちくださいませ。 (2021年1月24日 1時) (レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
碧央。(プロフ) - 初めまして。毎日読みに来るのが楽しみで続きが気になって仕方ないほどにとても好きな物語でした。切なく胸が痛くなる場面や、ドキドキして高鳴り、にやけてしまう程ラブラブな場面、とても楽しませていただきました！続編読みたいです！お願いします！ (2021年1月23日 23時) (レス) id: c1ed4221ec (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - 京さん、初めまして。京さんの描く色っぽくて魅力たっぷりな大野さんが大好きです。お話の更新をいつも心待ちにしておりました。このお話の続編、是非是非お願い致します！楽しみにしております！ (2021年1月22日 11時) (レス) id: 096605d473 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：京
| 作成日時：2021年1月3日 1時
