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「初めまして、櫻井の妻です」
「旦那さんとお仕事させてもらってます、大野です」
智くんは引きつった笑みで軽く挨拶をした。
「櫻井様、お待たせいたしました。お席のご用意ができました」
「あっ、はい…」
卑怯だ。こんなの。
俺は目も合わせずに、逃げるように店員の後をついていった。
おそらくあちらも家族で何かのお祝いなのだろう。
お姉さんがいるというのは聞いたことあるし。
あれだけ愛情表現をしてくれた人に対して、目の前で妻を紹介することがどれだけ辛いことか。
彼の気持ちを思うと、胸に突き刺さるような痛みが走る。
苦しくて、でも助けを求めることのできない…いわば自業自得とでも言うほうが正しいか。
「さっきの人、大野さん？すごいちっちゃくてかわいい顔してるのね。人の良さそうな感じ」
「あぁ…仕事がすごくできるんだ。いろいろ助けられてる」
「ふーん。いくつなの？結婚は？」
「俺と同い年。結婚はたぶんしてない」
「ふふっ、顔はかわいいけど男らしさが足りないのかもね」
値踏みするかのように、俺たちのテーブルの２つ隣にいる彼らを見つめる。
そんな人と俺は、関係を持ち続けているのだけど。
男らしさなんて必要ない。
いつだって俺の名前を呼んで、求めるようにキスをする。
少し恥ずかしいことを言うと、自由の利かない腕を折り曲げて、顔を隠してしまう。
外見だけじゃわからない魅力を、少なくともこの店にいる誰よりも俺は知っている。
そちらのテーブルを見やると、先ほどまでの緊張した面持ちとは打って変わって、楽しそうに家族の時間を過ごしていた。
ああやって笑わせることができたら。
そして、俺のことも心の底から笑わせて欲しい。
しばらく見とれるように焦点を合わせていると、妻が怪訝そうな顔で伺ってきた。
「今日で結婚して６年目ね！翔と一緒にいられて嬉しい！」
妻はあからさまに周囲に聞こえるように少し声を張り上げた。
俺は焦って目線を戻し、グラス同士をカチンと鳴らす。
「本当によかった。お給料はもう少し上がってほしいところだけど、不自由なく暮らせてるし」
「お前が働かなくても食っていけてはいるからな」
「何それ！必要最低限のことはちゃんとやってるよね！？それでお料理教室とか通ってるの、悪い！？」
「わかったって…あんま大声出すなよ」
「翔が嫌みったらしいからでしょ！」
そりゃ、わざとだからね。
イヤミの１つくらい言いたくもなる。
それ以上の仕打ちを毎日のように受けてるのだから。
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京(プロフ) - 碧央。さん» 碧央さん、ありがとうございます！詳細な感想までいただけて…本当に本当に嬉しいです！！まだまだ書き続けたいと思いますので、今しばらくお待ちいただければと思います！ (2021年1月24日 1時) (
レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - ゆうきさん» ゆうきさん、ありがとうございます！！細かく読んでいただけて大変嬉しく思います。続編はもう少々お待ちくださいませ！ (2021年1月24日 1時) (レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - butazch715413さん» ありがとうございます、そう仰っていただけて本当に励みになります！続編は書く方向で進めますのでもうしばらくお待ちくださいませ。 (2021年1月24日 1時) (レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
碧央。(プロフ) - 初めまして。毎日読みに来るのが楽しみで続きが気になって仕方ないほどにとても好きな物語でした。切なく胸が痛くなる場面や、ドキドキして高鳴り、にやけてしまう程ラブラブな場面、とても楽しませていただきました！続編読みたいです！お願いします！ (2021年1月23日 23時) (レス) id: c1ed4221ec (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - 京さん、初めまして。京さんの描く色っぽくて魅力たっぷりな大野さんが大好きです。お話の更新をいつも心待ちにしておりました。このお話の続編、是非是非お願い致します！楽しみにしております！ (2021年1月22日 11時) (レス) id: 096605d473 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：京
| 作成日時：2021年1月3日 1時
