透明な君と【Fischer's】 (ページ43)

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よんじゅうさんページ43

貴「あっ、モトキくん丁度良かった｣
ﾓﾄｷ「ん？どうしたの？｣

外出用の服に着替えたAさん
貴「本買いに行こうと思って、一緒に来て欲しいの｣

ﾓﾄｷ「そういう事ね、行こっか｣
外出は認められているものの

1人では出ないで、と言われている
途中で倒れたりしたら大変だからね

2人で病室を出て
受付のお姉さんに外出することを伝える

貴「やっぱり外はいいね、スッキリする｣
ﾓﾄｷ「うん、気持ちいいよね｣

夏の終わりの少ししめった風に
目を細めて微笑む

貴「…もう少ししたらね、退院できるんだって｣
ﾓﾄｷ「…えっ？｣

いつも通りに見える笑顔は
少し苦しそうだった

貴「退院して沢山遊びに行くの｣
そう言ったAさんを見て気づく

あぁ、もう治らないから
だから最後は自分の好きなことをして過ごせ

そういうことなんだと悟った
ﾓﾄｷ「…冬になったらまた旅行に行こうね｣

貴「うん、行きたいところがあるの｣
ﾓﾄｷ「いいよ、Aさんの行きたいところに行こう！｣

Aさんの顔を見れば
涙がにじんでいて

どうすることも出来ない俺は
手を強く握り直した