透明な君と【Fischer's】 (ページ31)

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さんじゅういちページ31

貴「冷たっ、ふふ、でも気持ちいい｣
一瞬驚いた顔をしたあと

頬を緩めて笑う
コロコロ変わる表情は子供っぽい

なのにどうして
海を見つめる横顔はこんなに美しいのだろうか

髪を耳にかける仕草に胸が高鳴って
思わず視線を外した

ﾓﾄｷ「また旅行しよ？次は冬でもいいかもね｣
暖かいところに逃げたいなぁ

ﾓﾄｷ「Aさん…？大丈夫？気分悪い？｣
Aさんを見ると

整った顔をゆがめて
右手で髪をくしゃりと握った

綺麗な髪が乱れる
貴「だ、大丈夫だよ…うん、冬にも旅行しよ？｣

無理やり作ったような引きつった笑顔
血色感のある透明な肌は青ざめ

今にも倒れそうだ
ﾓﾄｷ「大丈夫そうじゃないよ…無理しないで？｣

貴「頭痛い…｣
今にも泣き出しそうな掠れた声

ﾓﾄｷ「疲れが溜まっちゃったのかな？車に戻ろっか｣
Aさんを背負って

脱いであったふたつの靴を拾い車に向かう
ﾓﾄｷ「よいしょ、ちょった足触るよ｣

海水に濡れた小さな足をタオルで拭いて
靴を履かせる

俺の車だったらいいけど
一応レンタカーだしね

木陰に駐めていたおかげで
車の中はそんなに暑くなかった

ﾓﾄｷ「寝かした方が楽かな？｣
座席を倒してAさんを寝かせる

もともと海に入ったあとは
旅館に戻らず近くの温泉に行って

家に帰る予定だったから
まぁ、よかったかな

貴「ごめんね、モトキくん…私の所為で…｣
ポロポロと涙を流すAさんの頭を撫でる

ﾓﾄｷ「Aさんの所為じゃないよ？また旅行しよ？今回よりいい思い出作ったらいいじゃん｣

そう言うと涙を拭って
そうだね、っと涙目のまま言ってくれた

ﾓﾄｷ「よし、帰ろっか！家でゆっくり休もう！｣
Aさんに笑いかけると優しく笑ってくれた