･ ページ34
永瀬side
『これは妬いてまうなぁ…』
Aとの電話を切ったあと、俺は1人でドラマ鑑賞会。
リアタイはできひんかったけど当日中に見れた。
第1話から2人の物理的な距離は結構近めやったから、物語が進むにつれてもっと近くなっていくんやろうな。
俺最後まで見れるやろうか。
キスシーンもあるって言ってたのに。
Aの頑張ってる姿は見たいけど、他の男とのイチャイチャなんて、たとえ演技だって目に入れたくない。
Aが辛い思いをして撮影するであろうシーンも出来れば見たくない。
◇
俺がAの病気を知ったのは、映画のクランクアップ後のことやった。
関係者で打ち上げに行った時に、俺は彼女と隣同士の席に座って他愛もないことを話してた。
みんな酔いが回ってきたころ、違うテーブルに座っていたスタッフが、突然やってきてAの肩を抱いてこう言った。
「こんだけ金をかけて作った映画だからさ、ヒットしてくれないとな！宣伝頑張ってくれよ！」
普通にセクハラやろ、と思った俺はスタッフをさりげなくあしらいつつ、Aから引き剥がした。
大丈夫やった？って言おうとしたけど、言えずにそのまま飲み込んだ。
Aは俺の服の袖を掴んで、俯いて震えていた。
尋常じゃない震え方と冷や汗を見てただ事じゃないと思った俺は、適当ないい訳をしてAの手を握ったまま店の外に出た。
人気のない道に、Aの荒々しい呼吸音が響いて。
誰が見ても過呼吸を起こしてることは明らかやった。
俺が昔玄樹にやっていたようにAを落ち着かせていると、呼吸が整って安心したのか体力が消耗したのか、俺の腕の中に倒れ込んできた。
そのうち俺と2人で店の外に出ていくのを見ていたらしい彼女のマネージャーがやってきて、険しい顔をして俺に事の経緯を尋ねたから、俺はそのままのことを語った。
◇
それから5日後。彼女から会えないかと電話があって食事に行った時、迷惑を掛けたという謝罪と病気のことを打ち明けられた。
最初はセクハラが怖かったって事で終わらせようとしたらしいが、瀬戸さんに味方を作れと諭されたらしい。
過呼吸になってたときの対応も瀬戸さん以上に上手かったと、瀬戸さんから後で聞かされたんやって。
PTSDを発症したきっかけも、大体知っとる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 497人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
wei(プロフ) - 憂鬱ちゃんさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！今後はリクエストも募集したいなと思っているので、楽しみにしていてくださいね！ (2024年9月23日 10時) (
レス) id: 35b5c99a6e (このIDを非表示/違反報告)
憂鬱ちゃん(プロフ) - とても面白いです！例のシーンの撮影のお話読めるのが楽しみです！これからも更新楽しみにしているので頑張ってください♪ (2024年9月23日 9時) (レス) @page45 id: b62c2f6570 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Lilac | 作成日時：2024年9月6日 17時
