眠れない夜 ページ24
花野side
” 言うことが聞けないお前なんか、私の娘じゃない！！ ”
” 本当にお前にはがっかりしたよ。生きてる価値がないのに気づかないのか？ ”
” ここまで育てるのにいくら金をかけたと思ってるんだ！！！ ”
” この親不孝者！！！！！！ ”
『はっ…はぁはぁ…なんで今…』
ガバっと布団を捲って身体を起こし、ベッドサイドのテーブルに置かれた薬を流し込む。
テレビの特集のせいで思い出したくないことを思い出してしまった。
キンキンに冷やされたミネラルウォーターが、暴れる心臓を少し落ち着けてくれる。
いつになったら忘れられるんだろう。
◇
大学に入って半年くらいのとき。
教養科目で履修した教育心理学の授業中、子どもの心や身体が耐えられる限度を超えて教育を強制する、いわゆる教育虐待を扱ったときに事件は起きた。
ペアを組んでロールプレイングをすることになって、ペアの男子が父親役、私が娘役を演じた。
相手の男子の「こんな成績で良いと思っているのか！」
というセリフを聞いた瞬間、昔の記憶が蘇った。
特別感情がこもっていたわけじゃないのに、私の心を深く抉った。
息ができなくなって、その場に崩れ落ち。
クラスメイトたちが心配そうに私の顔を覗き込んでいて申し訳ないと思いながらも、私は意識を手放していた。
気がついたら病院にいて、医師から告げられた病名は” 複雑性PTSD ”
薬を処方されて定期的に通院することになってその日はすぐに解放されたけど、自分がそこまで限界だったことが結構ショックだったんだ。
最近はそこまで大きな発作はなく、病院もオンラインで頓服薬をもらうだけ。
ここにきてまさかのテレビでフラッシュバックが起きるなんて。
◇
気がかりなのは、この先撮影することになる暴言を吐かれるシーン。
一大学生の棒読みのセリフでも耐えられなかったのに、俳優さんの演技を目の当たりにしたらどうなってしまうんだろう。
病気のことを知っているのは瀬戸さんと廉くんだけなのに。
現場で迷惑をかけたらどうしようと不安で、とめどなく涙が溢れてくる。
こんなときに浮かんできたのは、どうしてだろう、
「明日が楽しみや！」と笑っている、今日見たばかりの道枝さんの笑顔で。
『あはは…さすがアイドルスマイルだね』
と独り言ちた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 497人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
wei(プロフ) - 憂鬱ちゃんさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！今後はリクエストも募集したいなと思っているので、楽しみにしていてくださいね！ (2024年9月23日 10時) (
レス) id: 35b5c99a6e (このIDを非表示/違反報告)
憂鬱ちゃん(プロフ) - とても面白いです！例のシーンの撮影のお話読めるのが楽しみです！これからも更新楽しみにしているので頑張ってください♪ (2024年9月23日 9時) (レス) @page45 id: b62c2f6570 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Lilac | 作成日時：2024年9月6日 17時
