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Thirty-seven ページ39

「Aっ! 」
B細胞に仕事を任せて、必死に走ってきた記憶細胞。
ものすごい勢いでAの部屋のドアを開けた。バタンという大きな音が廊下まで聞こえた。
分裂装置でコピーくんはいつも通りコポコポと泡を吐き出しながら目を閉じている。
変わらないのはそれだけだった。
割れた窓ガラス。たなびくカーテン。
なんとか足の踏み場は確保されていたが、荒らされていることに変わりはない。
そして、血飛沫が舞った痕跡が壁にベッタリと残っていた。
Aはどこにもいない。
それが意味するものはあまりにも限定されていた。
記憶細胞は変わっているが、馬鹿ではない。その意味が理解できるはずであった。
「そんな……」
信じたくなかった。信じることを拒もうとした。
しかしいくら目を背けても、現実はどこまでも彼を追いかけてくる。
「……A」
名前を呼んだら返事が返ってくる気がした。
ひょっこりそこから顔を出して、記憶さんって呼んでくれるんじゃないか。
記憶細胞はそう思わずにはいられなかった。
でもあの声は聞こえてこない。
Aはもう、ここにはいないのだ。
記憶細胞の頬に一筋の涙が伝った。
「記憶さん? 」
聞こえるはずのないその声に、勢いよく振り向けば、そこには血まみれの白血球と。
「どうしてここに? 」
自分の意思に関係なく、記憶細胞の体は動いていた。
「Aっ……! 」
思いっきりAを抱きしめていた。
驚きを隠せないAにかまわず、記憶細胞は必死に小さな彼女の体を抱き寄せた。
Aがちゃんとそこにいることを確かめるように強く強く。
「……無事で、よかった」
Aはしばらくの間、固まっていた。
何で記憶細胞がここにいるのか、どうして抱きしめられているのか、分からない。
分からないけれど、記憶細胞が傍にいるという事実にAはひどく安心して。
とうとう緊張の糸が切れたのか、Aは記憶細胞の胸に顔を埋めて泣き出したのだった。

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設定キーワード:はたらく細胞 , 記憶細胞   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:futureblue鏡 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年3月8日 17時

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