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Thirty-three ページ35

Aは続けた。
「それにコピーくん達を自分の欲望で歪めてしまうのは、絶対に嫌だったんです」
記憶細胞は頷きながらAの話を聞いていた。
だが彼女の次の言葉には到底頷けなかった。
「でも私自身にがん細胞にならないかって話なら、のってたかもしれないですね」
咄嗟にAの顔を見た記憶細胞。
彼女は笑っていた。
「なーんてじょうだ……き、記憶、さん? 」
冗談だと言いきる前に、Aの両肩がガシッと掴まれた。
それはもちろん、記憶細胞によってだった。
重い空気が2人の間を流れる。
「あ、あの」
「なあ」
記憶細胞の低い声に、Aは口を閉じた。何も喋ってはならない気がしたのだ。
もしかして怒らせた?
Aは口が滑ったことを反省しつつ、記憶細胞の次の言葉を待つ。
彼はAの目を見て言った。
「……お願いだから、冗談でもそういうこと言うな」
両肩へかかる力が強くなった。
ほんの冗談のつもりだったんです。
昔ならそう思ってたけど、今は違います。
記憶さんといるのがすごく楽しいから、もうそんなことを考えすらしません。
言いたいことや思ったことは言葉にならず、Aの中にしんしんと積もっていく。
大体、記憶細胞の懇願するような瞳を見てしまったら、そんな言い訳は無意味だった。
「もう、しない」
Aはそれだけ言って、記憶細胞の頬に右手を伸ばした。
「だから、そんな顔しないで? 」
触れたAの手は温かかった。
その温かさを逃すまいと、記憶細胞は目をつぶって彼女に顔を寄せた。
こつんと軽くぶつかりあった額に、記憶細胞は何らかの安心を感じていた。
そっと目を開けると、めいっぱいに映るAの顔。
「あ"っ!? 」
慌てて離れた記憶細胞だったが、その顔は真っ赤に染まっていた。
俺は何をやっているんだ!?いくらなんでも付き合ってない女性にこれはまずいんじゃないか!?
記憶細胞が1人でパニックに陥っているかたわら、Aも真っ赤な頬を両手で覆っていた。髪では隠せない耳も真っ赤だ。
何で記憶さん相手にこんなにドキドキしているの!?記憶さん、動作がすっごくスムーズだったんですけど!?
熟れきったりんごみたいになった2人を、行き交う赤血球達が不思議そうに見ていた。

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設定キーワード:はたらく細胞 , 記憶細胞   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:futureblue鏡 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年3月8日 17時

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