Twenty-one ページ23
声の方向を見ると、記憶細胞にブンブンと手を振る男がいた｡
見覚えのある青色のツナギと逆向きにかぶったキャップ｡
「あれって……｣
Aはそれが誰か思い出せなかった｡会ったことはあるはずなんだけども｡
「A、行こう」
記憶細胞にそう声をかけられ、Aは後ろをついていった｡
そこには男と見知らぬ女性が何かを話していた｡
「やっぱり記憶さんでしたか! 」
「見つけたのはアタシでしょ……ってあら? 」
女性の方がAを見て首を傾げる｡
Aは柄にもなく記憶細胞の後ろにさっと隠れて、少しだけ顔を覗かせた｡
柄にもなく、というのも、Aは基本的に人見知りをしない｡誰とでもすぐに話せるタイプである｡そうでなければ記憶細胞と話すこともなかっただろうし、こうして散歩することなどありなかっただろう｡
しかしながら、今日はAにとって初めてのおつかいならぬ初めての散歩｡楽しみだった反面、Aはひそかに緊張していた｡
「どうしたんだ?具合でも悪くなったか? 」
急に借りてきた猫のようになってしまったAに、加護欲をそそられつつ的外れなことを聞く記憶細胞｡
それに対してAはふるふると首を横に振る｡
記憶細胞が困っていたその時、男があ!と声を上げた｡
「あなた、記憶さんがご迷惑かけた時の細胞さんですか? 」
ご迷惑……｡
記憶さんが迷惑だったことなんてあったっけ｡
「B細胞くん!さすがにそれはひどくない!? 」
記憶細胞が男をB細胞と呼んだことでAの記憶が繋がった｡
「ああ、あの時の!思い出した!記憶さんを引きずってた方ですよね」
「いや、引きずってたってもうちょっと言い方が」
「そうっす!引きずってたのは俺です」
「どおりで｡見覚えがある方だなって思ったんです」
わいわいと記憶細胞越しにAとB細胞が盛り上がっている中、不服そうな女性の声がした｡
「ちょっと何、納得してんのよ｡話が見えないんだけど」
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年3月8日 17時
