認めないよ、そんな事実 (ページ20)

今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:12,827 hit

＊ページ20

「"これ"の始末はやっておくね」

「いや、僕がやるよ。パープルヘイズが一番早いだろうから」

「ううん、大丈夫だから」

フーゴは自分の気遣いを拒否されたことを受け止めた。彼は、自分ならそんな目で見ていた輩には触りたくもない、と感じていたので尚更彼女の行動が理解できなかった。

＊

暗闇に二人の声が響く。

「隠し事が沢山あるみたいね」

「…だから何？」

「辛いでしょう、何かを"隠す"というのは。簡単なことだと思っているようだけれど、相当追い込まれてるじゃない」

「喧しい」

一人が、クスクスと笑った相手の頬に拳銃を向けて引き金を引いた。

「ッ…痛い、わ……」

「お喋りが過ぎるの」

「…ッでも、本当に私…あなたが好きよ。あそこで拒んだのだって、こうしたかったから…でしょう？」

撃たれたことも気にせず片方は喋り続けた。口元から流れている血さえ、その容貌を引き立てる化粧のようになっている。

「ねえ？ーー司書さん」

ピクリと反応し、引き金が三度引かれた。

弾は眉間、次に鼻、そして最後に胸、と無駄なく撃たれた。眉間を撃たれた時点ではまだ少し息があったようだが、鼻先を撃たれたことで息を引き取ることになった。

「……」

拳銃を握っていた方は少しの間黙っていたが、やがて口を開いた。

「私は……悪くない」

それは、まるで叱られた子供のような口振りだった。やがて踵を返して帰ろうとすると、一瞬だけ吹いた突風により、特徴的な淡い赤毛が揺れた。

その名をレティ・フランチェスカ。

この世界の"司書"に当たる者で、同時に迷える子羊ーーいや、迷い込ませた子羊を先導する者でもある。

彼女が、善を知り悪を学ぶのはもう少し後のこと。

今はただ、心優しき者であろうとする精神だけが彼女を形取っている。