彼氏が出張中につき【文スト】

七通目 ページ7

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Aへ


ちょっと逆上せてしまったので、夕涼みに出たんだ


そしたら、ユリが咲いててね


ちょっと寂しくなってしまったよ


君が側にいないということが、思いの外怖くなってしまった


そのユリを摘もうとしたけどやめておいたよ


だって、私がそれを摘むのはよくないからね



川があったので、入水しようと思ったのだけれど、やめておいたよ


だって、今日はこの手紙を



送らなくちゃいけないんだからね



この手紙に、書きたいことがたくさんあったのだよ


今の、私の気持ちをね


でも、ど忘れしてしまってねぇ


君が前私に言った"老化"は案外間違っていないのかも知れない


私はまだまだ若いと思っていたのだけれど


まぁ、しょうがないか



あ、そうそう


昨日は、月が綺麗だったよ




＿＿＿＿
＿＿



『‥‥‥』

「A？」


『‥‥わ‥‥』

「わ？」




『私の彼氏が‥‥に、認知症？』

「そこなの？」


『ど、ど、どーしよう乱歩さん！

私冗談で言ったのに！』


「ちょっと落ち着きなよ。どう考えてもこれジョークでしょ」



『だってぇー！！』


「ほんっと彼奴はAを笑わせるのが下手だなぁ‥‥ほら、月でも見てくれば？ 今日は満月だよ？」


『月は昨日も今日も綺麗です！ よってどうでもいいです！

あぁー！ 太宰さん！！』


「‥‥‥」








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