at close range (ページ29)

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love letter 3 【Y】ページ29

今日いきなり「寒くないんですか！？」って後輩の女の子に言われて社内を見渡せば、みんながもう長袖を着ていて、別れてから三ヶ月の月日が経っていることを知った。

寒いとか暑いとか、美味しいとか不味いとか、楽しいとか眠いとか疲れたとか、そういうのの感覚が最近よく分からない。

俺、こんなんで、生きてる意味なんかあんのかな？

「渉！！！？」

突然揺すられて目を覚ますと、太輔がものすごい顔で俺を掴み上げてた。

「……何？」

「何じゃねーから。ビビらせんなよ」

酔っ払ってソファで寝ちゃってたらしい。

「死んでるかと思ったわぁ」って、半分冗談、半分本気の顔をした太輔が隣に腰を落とした。

太輔はAと共通の友人で、別れた後の無気力な俺を誰よりも心配してくれていた。

「なぁ渉……、Aに会えば？」

「何で？」

「だってお前、このままじゃ…」

「アイツが急に出て行ったんだよ。なんで俺が…」

何で俺が今さら

こんな俺が会いに行けるわけねぇだろうが

アイツは幸せなんかじゃなかった

Aの大切な十二年を

俺は奪ったんだよ

「……実家にいる」

太輔が、俺をみて静かにそう言った。

「A、実家にいるよ」

太輔が、苦しそうにそう言った。

「二人が別れた後少しして、Aから一度だけ連絡があったんだ。もしも渉が…、前に進めてなさそうだったら、私に会いに来てって、伝えてって」

太輔の声が、震えてた。

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遅い時間に連絡もなく訪れた俺をみて、Aのお母さんは全てを悟ったように淋しそうに笑った。

「A、奥の部屋にいるの」

アレ…、？

確かAの部屋は二階だったはずなのに

胸騒ぎがした。

恐る恐る襖を開ると、線香の香りが漂う部屋、満面の笑みを浮かべたAは、小さな写真立ての中にいた。

……は？

「渉くんごめんね」

いや、ちがくて

「黙っててごめんね」

本当に、そういうんじゃなくて

「ワガママな娘でごめんね」

何でアイツあんなトコに入ってるんですか？

お母さんは仏壇へ向かうと、写真立ての中で笑うAへ「渉くん来ちゃったよ。だから渡すね」と言った。

お母さんから手渡されたのは、可愛げのない茶封筒と見覚えのある小さなサイコロ。

「Aね、病院でも家でも、毎日そのサイコロふってたのよ」

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