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鈍い弟が頭に響く。
痛い痛い。
心做しか血が額から垂れている気もするが、それを悟らせないように強く抱きしめる。
「ギィヒッヒッ!!出ていきな!!吸血鬼!
それを早く離すんだよ!!」
気味の悪い声、モノ扱い、絶対に離してやるものか。
降り注がれる痛みに意識が何度も霞む。
それでも目の前の彼女のために俺は倒れてはならないのだ。
「だい、じょうぶ…お前は、絶対に守る」
二度と離すものか。
力を振り絞って彼女に繋がれた鎖を2つともをちぎってやる。ジャラ、と鎖が地面に落ちた
上からあいつらの気配がした。
ハッ、やっと来たんかて。
ほんま、遅すぎる。
彼女の耳に口を当てた
「ええっ、か、
今上にグルッペンとシッマ、っう、が
おる。」
「や、やだ」
察しのいい彼女は首を振った。
昔、オスマンに奪われる直前にひとつの禁忌魔法を見つけていた。こんなもの、役に立つのかと思っていたのだが
口の中には切れたときに滲んだ血。
彼女をまた引き寄せて唇を奪った。
殴られている振動が彼女に伝わらないように堪える
「『上まで走れ』……達者でなあ」
ぐわん、と意識が揺れる。
フードがパサりと頭から落ちて体も地面についた。
まだ殴られている。たのむ、たのんだぞお前ら
「うっ、ぞむ!!やだっ!」
私の意思なんて関係ないと言わんばかりに身体は逃げるように上に向かった。
長い廊下を走っていると何かが私に向かって来た。
チュ、
頭にキスを落とされる
「よお、頑張った」
あの独特な低い声が私の頭を2度優しく撫でて、今まで私がいた方向へと走っていった
背中を押されて私はまた地上に走る
お願い、無事でいて____
地上へと続く階段をかけ上って明るい電気が私を包んだ
「Aッ!」
「Aちゃんっ!」
「鬱様!コネシマ様!」
2人にぎゅう、と抱きしめられる。2人からはほのかにタバコの匂いがした
「よし、逃げよか。」
「は、え、ですが2人が」
「いや、行くで。あいつらは大丈夫。絶対帰ってくるから、な?」
2人に言われて急いでこの小屋を出た。といっても足元がふらついてしまった私はコネシマ様に抱きかかえられてしまったが
「え?どんだけ逃げればええのん」
「グルッペンが少しでって言っとったけど」
ザクザクと草を掻き分ける音、安心する2人の声に意識を手放し……そうになった
____ドカン!
なんて音が聞こえなければ
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アイス! - ええ話やぁぁ、、、もしかして主さん神ですか!? (2020年10月12日 21時) (レス) id: 7b09c37ff3 (このIDを非表示/違反報告)
根無し(プロフ) - サンプルさん» サンプル様コメントありがとうございます!最高の褒め言葉です! (2019年6月10日 0時) (レス) id: 7ed1204e38 (このIDを非表示/違反報告)
サンプル - めちゃくちゃ泣けた(TωT)ウルウル (2019年6月9日 20時) (レス) id: 37598dd4c5 (このIDを非表示/違反報告)
根無し(プロフ) - 理香さん» 理香様コメントありがとうございます!完結です〜!番外編もどうぞお楽しみください! (2019年6月9日 18時) (レス) id: 7ed1204e38 (このIDを非表示/違反報告)
草が頭に生えてる人(プロフ) - 完結お疲れさまです!これから番外編も楽しく読ませていただきます! (2019年6月9日 14時) (レス) id: 63555da9ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:根無し | 作成日時:2019年6月5日 23時