３ ページ3
「ちわ〜っす！」
今日は珍しい人が来た。
「こんにちは、仕立て屋さん。今日は、衣替えの？」
禿のうめが襖を開けると、風呂敷を抱えた男
「お、うめちゃん！見ない間に大きなったなぁ！
それに俺は使いっ走りやから、柊和って呼んでくれたらええのに。」
衣服の仕立て屋の柊和がいた。
「いつもありがとう。
そう言えば、もう袷(あわせ)の時期なんやね。」
「そや！…なに？Aは嬉しくないの？」
「あなたほどではない。」
「えぇ？そう？？」
柊和は、超がつくほど冬が嫌いだ。
冬の間は、ほとんど動かなくなる。
よくもこんなやつを雇おうと思うのだろうと、仕立て屋の主人を疑ってしまうほどに。
「…柊和、自覚しなさい。」
「あははは〜もうほんときっついこと言うわ〜」
全然気にしてないような元気な声の柊和。
まぁ、そこがいい所でもいいんだけど。
「そんなん言うの、Aだけ
…いや、あいつも言うか…」
「あいつ？」
前までは、「そんなん言うのAだけやで〜」だったのに。
「最近俺にも友だちできてん！！」
「へぇ。」
「めっちゃええやつやねん、ざわって言うんやけど、なんて言うか…Aに似とるかな？」
「…へぇ。」
「あ、ごめん。興味ない？」
「ううん、そんなことない。」
口では、そう言ってるけど、内心とても羨ましい。
だって柊和は外の世界と繋がっていて、そんな風に友だちを作ってこれる。
８つでここに連れてこられて、それからずっとこの中にいる私には、考えられない。
「今度会わせたるわ！」
じゃあな！そう言って、帰って行った柊和。
柊和がよくても、相手が会いたいかなんてわかんないのに。
でも、その心遣いだけは、嘘のつけない柊和が言うことだけは、表面しかないこの世界で、私を安心させてくれる数少ないものだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 150人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆう
| 作成日時：2017年9月6日 19時
