32話 ページ34
【夏油side】
「お前を、守るためだよ」
優しくこちらを見つめる彼女が放ったその答えに、唖然とした。
私を、守るため?
なんの、ために?
「その前に、1つお前に聞いて欲しい仮説があるんだ」
いいか?なんて真剣な顔で告げる彼女に、黙って頷く。
「非術師どころか、呪術師が憎くなると思うけどな」なんて、つまらなそうな顔をするAは何を言い出すのか。
「お前達が今回受け持った星漿体・天内理子の護衛についてだが、あれはおそらく、上層部の思惑通りの結果になった」
上層部の、思惑。
天元様の新たな肉体となる星漿体。その護衛という重要な役割を、2年生に任せること自体がそもそもの話おかしい、と彼女は言う。
「天元の指名だとかなんとか言ってたが、どうせ上層部のクソジジイからの指名を天元からの指名としたってとこだろ」
「あの腐れ野郎共が」と舌打ちをするAを呆然と見つめた。
それが事実なら、なぜ、上層部は私たちにそんな任務を任せた?
「これは勝手な想像だが、恐らく………」
「______天内理子は、本当に同化する星漿体のための囮だった」
囮。
その言葉に、ぞくりと背筋に冷たいものが流れ落ちるような感覚。そしてどうしようもない嘔吐感が身体を駆け巡る。
どういうことだ。
つまり上層部は、理子ちゃんのことをハナから死なせるつもりだった____?
「2年に任せたことも変だが、それ以上に星漿体の名前や顔写真が出回ってることがおかしい。そんな重要な少女の情報が流出するなんて、普通なら有り得ない」
仮にもここは高専。内通者でもいない限り、そんなドジは踏まないはずだ。
となると、可能性はただひとつ。
「天内理子の他に正式な星漿体が存在し、それを隠すためのブラフ。それが今回の真の任務だったんじゃないのか」
体の内側から蝕むような吐き気に襲われ、咄嗟に口元を片手で覆う。それでも込み上げる言いようもない不快感に、どうにかなりそうだった。
上層部にとって、天内理子という少女はただの代替品だったということか?
死んでも構わない存在だったと、そういうことか?
「もちろん、これは私の想像であって事実かは分からない。今ある事実は、星漿体の命が奪われたこと」
細くて長い人差し指が真っ直ぐ突き立てられ、次に中指がまた伸ばされた。
「お前らが、"天内理子"という1人の少女を守ろうとしたこと。その2つだけだ」
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みたらし(元三日月) - 面白かったです!笑える所、ヒヤッとする所…最後にはやっぱり闇落ちしてしまうのかなんて思いましたが、夏油と夢主ちゃんの最後の会話で感動しました…でもやっぱり「最凶」なんだなーと…w夏油推しにはたまらない作品でした!他の作品、これからも応援してます! (2022年3月17日 15時) (レス) @page47 id: 122f030fb9 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅。(プロフ) - さわさん» さわさんコメントありがとうございます!助けられないかもしれない、と思わせてからのどんでん返しをしたかったので、それが伝わってとっても嬉しいです。応援もありがとうございます、頑張ります! (2021年9月6日 8時) (レス) id: b794bc2212 (このIDを非表示/違反報告)
さわ(プロフ) - 今更ながらコメント失礼します!夢主が原作は変えられないと気付いた所は本当に辛くて顔が歪んだのですが最後まで読み本当に嬉しくなりました。これからも頑張ってください! (2021年8月25日 19時) (レス) id: 2994709d1c (このIDを非表示/違反報告)
ミナこ餅 - 完結おめでとうございます。この作品は今まで見た中で1番面白いです。ちゃんと説明もついてますしなにより矛盾してる点などが無いので!これから他作品も見させて頂きたいと思っておりますが、頑張ってくださいね! (2021年5月9日 7時) (レス) id: 5b0fda8cd6 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅。(プロフ) - なな。さん» ななさん、最後まで読んでくださってありがとうございます〜!!戦闘シーンは大分キツくて何度も心が折れかけたのでそう言っていただけるととっても嬉しいです泣 これからも頑張ります、応援ありがとうございます!! (2021年3月6日 20時) (レス) id: b794bc2212 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わらび餅。 | 作成日時:2021年2月6日 21時