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義勇side




俺にも、姉がいた。




綺麗な人だったと言えば、日生はそれはそうだろうと笑う。




「……祝言を挙げる前日、鬼から俺を守って死んだ。」




『………………そんな……』




彼女は今にも泣きそうな顔をしていて。




さっきまで緩やかに笑っていたのに、俺の言葉を聞いた途端顔をゆがめて押し黙る日生を見て少しだけおかしくなってしまう。







「義勇、いつかね、貴方にも大切に想う人ができるわ。」


「大切に想う人?俺は蔦子姉さんが大切だよ」


「ふふ、ありがとう。でもそれとは別なの。もし想い人ができたら、相手の気持ちに寄り添って、泣けるくらいの人になりなさい。」


「うん、わかった!」


「いい子ね、義勇。きっと義勇なら、明るくて人の気持ちを汲み取れる素敵な女性に出会えるわ。」








そんな会話をしたのはもうずっと前だ。




蔦子姉さんの言う素敵な女性に日生はよく当てはまると、そう思う。




『…冨岡さんのことを、とても愛していたんですね。』




今だって、どんな言葉で俺の気持ちを救おうか考えているのだろう。




「………俺の姉は、強い人だった。」




俺とは、違って。




犬に噛まれて引きずられたときも、夜中に怖くてトイレに行けなかったときも、いつも蔦子姉さんは俺を助けてくれた。




あの日だって。




俺を守るために鬼に1人で立ち向かい、俺が出てこないようにどんなに痛くて怖くても声を上げずに喰われたのだ。




俺は何も守れない。




蔦子姉さんが守ってくれた命でも、何も守れなかった。




親友のことでさえ。




きっと蔦子姉さんは強い人だったから、俺がいなければ今頃幸せに生きて沢山の人を笑顔にできていたんだろう。




錆兎だって、もしかしたら俺が足を引っ張っていなければ生きていたのかもしれない。




俺が居なければ。




『それは、冨岡さんが居たからだと思います。冨岡さんが居たから、強くなれた。』




俺の心情を分かっているかのように、目を見て真っ直ぐ言葉を紡ぐ日生。




その慈しみを帯びた優しい真っ直ぐな目は、まるでいつの日かの蔦子姉さんのようで。




俺はなんだか気恥ずかしくなってそのまま口を噤んだ。




2人の間におちた沈黙は、不思議と心地のいいものだった。

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きよりん(プロフ) - わらび餅。さん» 飲み会(笑)いえいえ、指摘なんて失礼しました。 (2020年7月8日 10時) (レス) id: 599608a929 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅。(プロフ) - 義勇大好きな女さん» わ〜!そんな風に言っていただけて嬉しいです!お読みいただきありがとうございます〜!! (2020年7月8日 6時) (レス) id: b794bc2212 (このIDを非表示/違反報告)
義勇大好きな女 - 話終わったら、目から水が、、、!? (2020年7月7日 22時) (レス) id: 8ebef6a95a (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅。(プロフ) - きよりんさん» そうです、軟骨になってますね……笑ご指摘ありがとうございます、直しておきます……軟骨と包帯って今から飲み会でもやんのか?って感じですねすいません……笑 (2020年7月7日 5時) (レス) id: b794bc2212 (このIDを非表示/違反報告)
きよりん(プロフ) - 31話と32話に軟骨とありますが軟膏の事ですか? (2020年7月6日 23時) (レス) id: 599608a929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わらび餅。 | 作成日時:2020年5月22日 11時

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