わがまま王子 -藤北- (ページ12)

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わがまま王子 12 ページ12

｢……っ！そう、でしたか。｣

藤ヶ谷の表情が、ちょっとだけ強ばったこと、俺にはよくわからなかった。

｢……あんまり顔に表情出さない人で

主の俺に暴言吐いたり

正直、どんな神経してんだよ、って

思ってたんだけどさ……｣

藤ヶ谷がどんな顔してるか、なんて

確認できるわけない。

｢俺がその人に怒られた時に

その人、なんかすげーつらそうな顔しててさ

今にも壊れそうな、そんな感じがしたんだ……｣

藤ヶ谷に掴まれた手首がまた熱くなって

きゅ、っと左手で握る

｢……ずーーーっと、その人のあの表情が忘れられなくて

女からの誘いも全部断ってさ、

でも揺さぶってみたくて嘘ついて

それでもあの時の表情は見れなかった｣

なんで、なんで、って

なんであんな顔、なんで俺はこんな気持ちなの、って

｢俺、人生で初めて恋したんだ～……｣

｢……っ！｣

藤ヶ谷が、明らかに表情を変えた。

でも俺は怖くて、

それがどういう気持ちの表情なのか、わかんなくて

｢好き、って簡単に言えたら

よかったのになぁ｣

そうつぶやいた瞬間に

｢わっ………｣

ふわっ、と

甘くて優しい匂いに包まれて

あ、俺、抱きしめられてる

と気づいた。