【A3!】ワンシーン・ワンカット【皇天馬】

最終話 ページ41

はろーはろー。
今を時めく人気美少女女優兼上半期CM女王の松岡Aで〜す。…その顔やめてよ。
昨日は現在放送中のドラマ『BUDDY２』の番宣で収録だったんだけどね？
もちろん、共演者である皇天馬こと天馬くんも一緒でーす。…ウザいって？ごめん…
それでさ、某トークショーの収録でさ。あの饒舌な司会者が言うわけよ。


「ところで、次回放送の最終話は今までと違うそうですがどこら辺が違うんですか？」


絶対分かってて聞いてるじゃん！みたいな。そう思うでしょ？…でしょ！私も口に出そうになったもん。いやちゃんと我慢したけど。真澄君じゃないし。…いたっ！だって真澄君なんでもすぐいづみさんに言うじゃん！――いやわかったって。それ長くなるでしょ後にして。
それで私、こう言ったの。

「最終話では、長回しという技法を用いて撮影しています。」
「長回しとは、具体的にどういうものなんですかね？」
「簡単に言うと、1つのシーンをワンカットで撮り続けるんです。視点がずっと同じ場所ということですね。」

流石でしょ！天才涼ちゃんやってるだけのことはあるでしょ！…ごめんって。
撮影終わりに共演者の皆さんに挨拶をして楽屋に一緒に戻ったのね。天馬の楽屋は隣なんだけどね。実は割と仕事が同じときはどちらかの楽屋にいて、話すことにしてるんだ。近況報告も含めてね。
これからこんなドラマがあるとか、劇団は今こんな感じとか、今度の公演はこんなの、とか。
クランクアップの後に決めた、私達の約束。もう、遠くならないように。

――――ワンシーン・ワンカット。
さっきは言ってなかったけど、それは10年も遠回りした私達の、出した答え。


「なぁ、」
「え？」


肩に回った手と、呑み込んだ呼吸。


「――【皇天馬、松岡AとBUDDY婚】、なんてな」
「いつになるのかわからないけど、また紙面で知るのだけは勘弁ね」


こんな一大スキャンダルを知るのは、私達と真澄くんくらい？
だから、オフレコでよろしくね。

「俺と監督の結婚も紙面で伝える。だから新聞社の手配よろしく」
「いやがらせじゃん…そこまでの権力はないよ私」
「ていうか結局何？惚気？」
「まーそういうことかな〜」
「うざ。次は俺の話ね。今日も監督は――」


…始まっちゃった。これは長くなるな。
さて。私が主人公のこの物語は終わっちゃうけど、大丈夫。






――――The show must go on.




“ヒロイン”松岡Aは、まだ始まったばかりだから。

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