第5話 ページ5
・
・
“彼氏”にしたい芸能人ランキング三年連続1位
松岡A。
アイツと出会ったのは今から10年前。
忘れもしない、俺の代表作が最初。
『天馬君って2世だよね？』
『え？あ、あぁ…』
『僕もなんだ〜 あんまり話せる人いなかったから、共演できて嬉しいよ』
『お、俺も！』
松岡夫妻と言えば、歌手の夫と演技派女優であった妻という事でその名を知らない人はいないだろ？
妻の方は俺の両親とも度々共演してる。
その、息子。
自分と同じ境遇の奴がいなかった俺にとって、初めて気兼ねなく話せる相手だった。
そして、演技も上手かった。
台本はその場で読んで覚えるし、監督のオーダーにすぐ合わせられる。
俺がアドリブを入れてもついてこれる。
こんなにやりやすいと思った相手は今までいなかった。大人も含め、だ。
『涼役がAでよかった』
『僕の方こそ！隼人が天馬くんで良かった』
ふにゃりと目尻の下がる笑い方も嫌いじゃなかった。
――――けど。
【涼： 今更言えないよ…隼人は、僕の事男の子だって思ってるんだから】
この年にして異性役なんて大したもんだな、と思った。
本当に凄いのはここからだった。
『Aちゃん、暫く男の子役だったから女の子出来るかい？』
『え？そりゃあ、まあ』
『……え？』
――――“ 男の子役だった ”…！？
頭を鈍器で打たれたような衝撃だった。
隣に座ってる此奴が、急に違って見え始めた。
その事に、……正直物凄く戸惑ったんだ。
『A、お、おま、い、いつから女だった！？』
『…生まれた時からだよ？』
俺だけが気づいてなかった。
俺だけが知らなかったんだ。
考えても見ろよ…半年くらい一緒にいた奴が女でしたってそんな簡単に受け入れられるか？そんなすぐに。……お前は別だろ。
まだ小学生になりたて。
個体差はほとんど無い。
……いや、今思えば割と違うところはあったのかもしれない。
「ほんっとぽんこつだね…？」
「…アイツの演技力がそんくらい高かったんだよ」
手を引く場面とか
顔を見合わせる場面とか
抱きしめ合う場面もあった。
難なく出来るはずだった。
……笑えるよな。
それが、出来なくなった。
分からなくなったんだ。
「“涼”は確かに俺の相棒なのに、
演じてても“A”に見えて仕方が無かった」
これは俺しか知らない制作秘話ってやつだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 544人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
春野さん(プロフ) - 完結おめでとうございます！タイトルからこんな風に繋がるとは思ってなくて、思わず涙が出ました。本当に素敵な作品だと思います。この作品に惹かれたのがきっかけで天馬最推しになった位(笑)次回作やアナザーストーリー、あれば期待しています、頑張ってください！ (2018年8月31日 10時) (
レス) id: 43b6e8fc40 (このIDを非表示/違反報告)
ゴム手袋(プロフ) - いいところで更新停止ー！！！めちゃくちゃいいとこでー！！！待ってますー！！！！！ (2018年8月7日 10時) (レス) id: 2405ca442d (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - 狂さん» コメントありがとうございます！嬉しいです…！頑張ります！！ (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - Mareさん» コメントありがとうございます！更新できるように頑張りますね！ (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
狂(プロフ) - とても引き込まれました！頑張ってください！ (2017年12月29日 11時) (レス) id: 4e15e8f7b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：一華 顕音 | 作成日時：2017年12月7日 17時
