第4話 ページ4
・
・
少女マンガや、恋愛モノに良くあるシチュエーション。
何年も一緒に過ごしてきた幼馴染を好きになるってやつ。
私には、あれが出来ない。受け入れられない。
でも――気持ちは、分かる。
つまりは、関係が変わるのが怖いだけなのだ。
「…じゃあ何、その仕事受けないの？」
「そ、れは…！」
「だって出来ないんでしょ。じゃあ辞めるしかなくない？」
「無理だよ…それは」
甘い事言ってるって分かってる。
通用しないって、分かってる。
どうにかしなくちゃいけない。
だって私はプロなんだから。
そう思えば思うほど、苦しくて。
どうしていいか分からなかった。
「A、……天馬に会いなよ」
「え」
「会ったら何か変わるかもしれない」
「碓氷君…」
――――『俺達、また隣に並ぼうな！』
クランクアップの時に花束を手にして彼は笑っていた。
私も同じ気持ちだった。
だから手を取って、握って。
なんだか泣きそうで。
大きくうなづく事しか出来なくて。
もしあの時何か言えたなら、
私はなんて言ってたんだろう。
そう思ったあの日から彼とは疎遠になって。
別の俳優や女優と楽しそうな姿にちょっと嫉妬もした。
だって私はそこに――――彼の隣に立ちたかったから。
…遂にそれは、まったく別の形で叶おうとしているのだけど。
それに、これも運命かもしれない。
私の目の前でちゃんと話を聞いて答えてくれる彼が、私達を繋いでる縁なのかもしれない。
珍しく真剣に助言してくれる彼は結構良い人だと思うし。
「ちなみに監督は絶対に可愛く笑う」
「うん、そんな気はしたかな！！？」
「…あーー良かった、真澄だわ」
「別人に乗り移られたかと思ったよ…」
「いや、碓氷君の扱い」
私は今の彼を知らない。
知ろうともしなかった。
ただ、彼は進んでいた。
あんなに怖がってた舞台に立って、
こんな人達と一緒に過ごして。
テレビに映る顔が変わったと思った。
「んじゃ、帰るか。……あ、キスシーンの練習ならいつでも付き合ってやるよ」
「ワンレンはマジで無いわ」
「テメェ、どっかの大根と同じ匂いがすんな！？」
「大根じゃないから天才女優だから」
「ぬかせビビり」
「うるさいセクハラ」
彼は私を覚えていたのだろうか。
彼は私を――――見ていてくれただろうか。
「大丈夫、だよね」
彼は私に
どんな言葉をかけるのだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 544人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
春野さん(プロフ) - 完結おめでとうございます！タイトルからこんな風に繋がるとは思ってなくて、思わず涙が出ました。本当に素敵な作品だと思います。この作品に惹かれたのがきっかけで天馬最推しになった位(笑)次回作やアナザーストーリー、あれば期待しています、頑張ってください！ (2018年8月31日 10時) (
レス) id: 43b6e8fc40 (このIDを非表示/違反報告)
ゴム手袋(プロフ) - いいところで更新停止ー！！！めちゃくちゃいいとこでー！！！待ってますー！！！！！ (2018年8月7日 10時) (レス) id: 2405ca442d (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - 狂さん» コメントありがとうございます！嬉しいです…！頑張ります！！ (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - Mareさん» コメントありがとうございます！更新できるように頑張りますね！ (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
狂(プロフ) - とても引き込まれました！頑張ってください！ (2017年12月29日 11時) (レス) id: 4e15e8f7b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：一華 顕音 | 作成日時：2017年12月7日 17時
