第30話 ページ30
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躊躇いも、戸惑いも無い。
私はやっと輪郭を描いて、ちゃんと彼の隣に立つ。
交わす視線の意味が変わりだす。
触れる温度が変わりだす。
それでも、私達はずっと一緒。
それを確信した今、
手の震えはもう無い。
「今日もよろしく、天馬」
「こちらこそだ、A」
間合いも呼吸も視線の交わし方も。
私達はちゃんと知っているし、ちゃんと出来る。
その心地良さを改めて感じるたび、やはり私は“皇天馬”が特別だと思う。
――――“椎名涼”で、良かったと思う。
『隼人、もう少し頭を使ってくれる？脳味噌まで筋肉なの？』
『馬鹿にすんな。お前こそ運動神経どこに捨ててきたんだ』
『いいんだよ。…君がいるんだから』
『……はは、それはそうだな』
軽率なやりとりが心を踊らせる。
呼吸を合わせて、
視線を合わせて、
――それでも噛み合わないところは誤魔化して。
そうして私達はあの頃の2人で
新しい関係を作り上げる。
『隼人のそういうところ、私の好みだ』
ずっとその背中を追いかけてきた。
1歩進むたび、3歩離れていくような彼を。
願って、願って、ずっと、待ってて。
『じゃあ、転ばないように手でも繋いでやろう』
開いた距離を取り戻すのに、10年もかかってしまった。
もどかしさも苦しさも、焦燥も。
全てもういいと思えた。
今ここで、私の隣で、彼の隣で、こうして――――手に、触れる事が出来ていることで、
「はい、カット！！」
「今のは良かったな」
「ちょっとぎこちなかったんじゃない？」
「そ、そんなことないだろ」
失くしたものを、取り戻せたから。
「あ、水無くなった…貰ってくるね」
「一緒に行くか？」
「…子供じゃないんだから。大丈夫ですよー」
「迷うなよ」
「迷うのは君だけだよ」
「なっ…」
きっと、大丈夫。
あんなに怖がってたのが不思議なくらいだ。
何気ない一挙一動でも、こんなに胸が熱いのに。
「普通の女の子みたいだな…私」
それを教えてくれるのは、いつも。
いつも、
――――「あれ……A君じゃないか」
手から滑り落ちた紙コップの水が足に染みる。
広がった水溜りに、温度が全て溶けだす気がした。
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春野さん(プロフ) - 完結おめでとうございます！タイトルからこんな風に繋がるとは思ってなくて、思わず涙が出ました。本当に素敵な作品だと思います。この作品に惹かれたのがきっかけで天馬最推しになった位(笑)次回作やアナザーストーリー、あれば期待しています、頑張ってください！ (2018年8月31日 10時) (
レス) id: 43b6e8fc40 (このIDを非表示/違反報告)
ゴム手袋(プロフ) - いいところで更新停止ー！！！めちゃくちゃいいとこでー！！！待ってますー！！！！！ (2018年8月7日 10時) (レス) id: 2405ca442d (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - 狂さん» コメントありがとうございます！嬉しいです…！頑張ります！！ (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - Mareさん» コメントありがとうございます！更新できるように頑張りますね！ (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
狂(プロフ) - とても引き込まれました！頑張ってください！ (2017年12月29日 11時) (レス) id: 4e15e8f7b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一華 顕音 | 作成日時：2017年12月7日 17時
