好きだよ ページ43
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思いがけない言葉。
"かわいい"
響きに、とくん、心臓が音を立てる。
「…なんで、そんな、まっすぐに、俺のこと…好きだって言ってくるの。」
「そ、それは…」
ドキドキして俯く。
ウォヌさんが好きだからです。
「なんで、こんなに…俺の心に入ってくるの。」
私みたいに質問を重ねてくる。
顔を上げたら、眼鏡の奥の瞳、潤んでるように見えて
ウォヌさん
小さく名前を呼んだら、彼は息を吐いたあと続けた。
「…もう、誰かを好きになるつもりなかった。好きになっちゃいけないとさえ…思ってたのに。」
…もしかして
"ウォヌや、良かったなあ"
"しばらくそういう彼を見てなかったみたい"
過去に何かあったの?
私の頬っぺたを優しく触れてくれてるように、彼の頬っぺたに手を伸ばす。
冷たい。
自分のおでこに私のおでこを軽く預けると
「…なんで、俺の隣に越してきたの…」
ぽつり呟いたウォヌさん。
…分かんないよ
気に入った部屋がたまたまお隣だったの。
でも、こういうのが…運命なのかも
なんて信じたくなる。
「…私、お隣に越してこなきゃ、よかったですか…?」
言ってみたら、上げられた顔。
小さく浮かべられた笑み。
「…そんなワケない。分かってるでしょ。」
「…はい。」
私に注がれる柔らかくて温かい眼差し。
…好きじゃないですか、私のこと。
「…Aさん。」
「はい。」
このあと何を言われるのか、もう分かっていたし、期待もしちゃってる。
そして
「…好きだよ。」
「…ウォヌさん。」
「Aさんのこと、好き。」
待ち望んでいた言葉が告げられた瞬間、ぶわあっと良い意味での鳥肌がたった。
「わ、私も、好き!」
彼の服の袖、ぎゅっと掴む。
「ウォヌさんのことが、好きです!」
目で頷いてくれた彼の胸に頬っぺたを寄せたら、ゆっくり抱きしめられる。
「…傷つけてごめん。」
「…謝らなくていいです。もう謝らなくていいから、」
彼の腕の中で顔を上げる。
少しだけ腕を緩め、見下ろしてきた視線が絡み合った。
吸い寄せられるように唇を重ねる。
触れた唇は冷たかったのに、全身に熱を与えた。
ゆっくり唇を離して見つめ合う。
…足りない
触れるだけのキスじゃ足りなくて。
ウォヌさんもそう思ってること、注がれる視線で分かった。
ずっと分かんないと思ってた彼の気持ち。
こうして見つめ合ってる今、手に取るように分かるのは、私も同じ気持ちだからで。
ウォヌさんの服の袖、軽く引っ張った。
彼が一歩近づいた。
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作者名:余暇
| 作成日時:2024年9月7日 0時


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