苦しい ページ40
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辿り着いたベッド。
私をおぶったまま、ウォヌさんがベッドの傍にしゃがむ。
着いたよって言うように向けられた顔。
じいっと見つめてから、彼の首から腕を離すと、背中から降りてベッドに腰掛ける。
熱くなってきた
コートを脱ごうとして、ボタンがきっちりとまってることに気づく。
あれ、いつもボタンなんかとめないのに。
面倒くさくて外す手を止めたら、しゃがんだ状態で体ごと振り返ってたウォヌさんと同じ目線になってて。
眼鏡の奥の瞳はやっぱり優しい。
…私のこと好きだと伝えてくれてるみたい。
でも、それは
「…そんな目で見ないでください…」
違うの。
私の勘違いなの。
こんなに優しくしてくれてるけど
"ごめん"
フラれたんだもん。
伏せられた目。
ごめん
小さく呟いた彼の胸を強めに押す。
「…もう、聞きたくないです、それ。」
「…ん。」
「…か、帰って、帰ってください…」
「…ん。」
静かに立ち上がったウォヌさんを見上げる。
「…戸締りしっかりね。」
頷くことも返事もしない私に背を向け、玄関へ向かっていく。
ベッドでぼおっとしていたけど、ドアノブの掴まれた音が聞こえた瞬間、体が勝手に動いてた。
ばたばたっと玄関に駆けていき、駆けてくる私に気づいて振り返ろうとしたウォヌさんに後ろから抱きつく。
ぎゅうっとしながら動かないでいると、彼が自分の腰に回されてる私の腕に触れた。
…そして、ゆっくり解かれたのに顔を上げると、振り返ったウォヌさんは眉を寄せて私を見つめる。
そっと掴まれた手首。
視線を落としたあと、彼の顔を見上げた瞬間、軽く手首が引かれたかと思えば、ふわっと抱きしめられる。
「ウォ、ウォヌさん…？」
一瞬、何が起こったのか分かんなかった。
でも自分の体を包み込む腕に力がぎゅっと込められたのに、抱きしめられてるんだと分かって。
…なんで、こんなことするの？
分かんないよ、ウォヌさんのこと。
心が苦しい。
滲んだ涙で視界がぼやける。
こんなの苦しいのに、ウォヌさんの腕の中がすごく温かくて、気持ち良くて、離してほしくなくて。
彼の背中に腕を回し、胸に頬っぺたを寄せたら聞こえてきた心臓の音が心地良くて、多分そのまま寝ちゃった。
目を開けたら、ベッドにいた。
カーテンの隙間から差し込んできた朝日。
頭の痛みに顔をしかめる。
…昨日の全部夢だったのかな。
"鍵 ポスト"
卓上に置いてあった、ボールペンで殴り書きされたチラシの裏紙が夢じゃないと教えてくれた。
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作者名：余暇
| 作成日時：2024年9月7日 0時
