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嫌いになれたら ページ39


「…歩けます。だからもう放っておいてください。」
「…放っておけないの分かって言ってるでしょ。」
「…分かんないです。」

首を横に振る。
面倒な子になってるの自分で分かってる。
でもいいの、もう。
一緒にいたらつらい、このまま放っておいて。
そのくせ、いざ放っていかれたら、もっとつらくなる。
ああ、ホントに面倒っちい、私。

「立てる?」

差し出された手、ぱしっと振り払う。
ホントは嬉しいのに

「…放っておいてくださいってば。」

意地を張っちゃう私を

「ムリだってば。」

眉を下げて困ったように笑う。
…なんで、怒んないの?

「…お巡りさんだから、放っておけないんですよね。」

ふいに、私と彼の間に白いものがふわりと舞い落ちてきた。
…雪だ。
二人でぼおっと見つめたあとに視線を戻せば、ウォヌさんも私を見てきてて。

「…違うよ。」

眼鏡のレンズ、雪がひとつ、すぐに消える。

「Aさんだから…放っておけない。」

…もお、この人やだ。
嫌い。
でも同時に好きだとも思ってる。
ううん、好きなの。
好きしかないの。
…嫌いになれたらラクなのに。
小さな反抗のつもりで、彼の胸をグーで叩いた。
ウォヌさんに手を取られながら立ち上がろうとしたけど、足に力が入らなくて支えられる。

マンションまで、10分ほどの距離。
…結局、またおんぶしてもらうことに。
雪が頬っぺたを撫でる。
背中の温かさに、涙がじわあっと浮かんでくる。
彼の首に回した腕、少しだけぎゅっとして。

「…好き。」

呟いた声は、車の走る音で掻き消された。

「…重くないですか?」

階段の前で降ろされると思ったのに、私を背負ったまま、スタスタ上がっていくウォヌさん。

「平気。」
「…ホントに?私、今日結構食べたのに。」
「ああ、そうなの。でも、それなりに鍛えてるから。」
「…お巡りさんって鍛えてる人多いんですか?」
「多いかも。体が資本だよ。」
「…でもウォヌさん、体に悪いもの好きじゃないですか。」
「…聞こえない。」
「うそだあ。」

軽く耳に触れたら、ウォヌさんがぴくって反応したのに笑っちゃう。
…こうやって普通に話すの久しぶりだった。

辿り着いた私の部屋の前。

「着いたよ。」
「…はい。」

…やだ、まだ降りたくない。
コートのポケットから取り出した鍵、彼の顔の前に掲げる。

「…ベッドまで歩けないです。運んでください。」
「…さっき、歩けるって言ってなかったっけ。」
「…聞こえない、です。」

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作者名:余暇 | 作成日時:2024年9月7日 0時

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