久しぶりの ページ35
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ウォヌさんの動きが止まる。
一歩、前に踏み出て彼を見上げる。
泣きそう
声が震えそうになる
きゅっと唇を噛み締めてから口を開く。
「わ、私…ウォヌさんが、好きです。」
告白なんていつぶりかな。
…あ、初めてだ。
だって私、今までの恋愛は、ほとんど受け身だったもん。
自分から告白するのは、ウォヌさん、あなたが初めてなんです。
ウォヌさんの目が少し伏せ気味になる。
「…私、ウォヌさんも、私と…同じ気持ちだって、昨日…感じたんです。私のこと…好きだと思ってくれてるって。だけど、それは…私の、」
声に涙が混じりそうになる。
やだ、泣きたくないのに。
面倒くさい女の子だと思われたくない。
すでに面倒くさいかもだけど。
「か、勘違いですか…?」
彼が私と視線を合わせる。
ふいにきゅっと寄せられた眉。
「…Aさんは、良い子だよ。」
「え…?」
答えになってない。
答えになってないです
言おうとしたら、その前にウォヌさんは言った。
「でも、俺は…Aさんみたいな子に想ってもらえるような人間じゃない。」
「ど、どういう意味ですか、それ…」
「ごめん。」
苦しそうな表情で謝ると、ドアの鍵を閉め始める彼の服の端っこを掴む。
「意味、分かんないです。私に想ってもらえるような人間じゃないって、どういう意味ですか?私は、今までウォヌさんと一緒に過ごしてきて、ウォヌさんのこと、素敵だなっていっぱい思いました…!」
だから好きになったの。
ドアノブに目を落としたまま、ウォヌさんは黙ってる。
「私のこと、助けてくれたし、」
「…仕事だよ。」
胸がズキッと痛む。
「…や、優しくだって、」
「…優しい人間だったら、今こんなふうに泣かせてない。」
言われて気づいた。
自分の頬っぺたに涙が伝ってること。
「Aさんは、」
ウォヌさんが顔だけを向け
「俺のこと、知らない。」
手の力が抜けて、掴んでた服を離す。
…私は、ウォヌさんのことを…知らない?
名前、年齢、お仕事、好きな食べ物、お友達、優しさ…
私が知らないウォヌさんってなに?
聞きたいのに、言葉が出てこない。
…ああ、なんでこうなっちゃったの。
昨日のあのときまで一緒に楽しくご飯食べてたのに。
次のお家ご飯は何食べますか?
聞いたら
すき焼きがいいな
笑ってたのに。
階段を降りてく足音が耳に響く。
"ごめん"
…これ、私、フラれちゃったんだよね…?
胸が痛い。
久しぶりの失恋、こんなに痛いものだったんだ。
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作者名:余暇
| 作成日時:2024年9月7日 0時


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