名前 ページ24
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「あのっ！名前、知りたいです！」
"顔見た瞬間に聞いちゃうの"
顔を見た瞬間に聞いた。
このタイミングを逃すと、もうずっと聞けなくなりそう。
ジジをそっと撫でながら、彼が私に顔を向ける。
ドキドキ、言葉を待っていると
「ジジ。」
告げられた名前。
澄ました顔で答えられたから、え？え？って戸惑う。
一瞬、ホントに、ネコちゃんと彼が同じ名前の可能性も過りはしたけど、そんなワケなくて。
…多分、私が聞きたがったのが、ネコちゃんの名前の方だと勘違いしたんだと思うから
「ジジの名前は前に教えてもらって知ってて…」
彼を両手でパッと指し示す。
「お、お巡りさんのお名前、です…」
瞬きを繰り返してから
「ああ…俺のですか？」
人差し指で頬っぺたを軽く掻いて聞いてきた彼に頷く。
やっぱり勘違いしてたみたい。
少しの沈黙のあと
「…ウォヌ。」
ずっと知りたかった名前を知った瞬間、胸がいっぱいになる。
ただ、名前を知った、それだけのことなのに。
嬉しくて仕方なくて。
彼の名前が特別な響きを持って聞こえて。
「…ウォヌ、さん。」
嬉しさを噛み締めるように、そして忘れないように。
呟いたら、勝手に緩んじゃう口元。
ふふって思わず笑えば、不思議そうに見つめてきた目と目が合って我に返る。
「あ、えっと、お隣さんのお名前を知らないのは…失礼なのかなって思って、その、」
「いや、最近では普通だと思います。名前も立派な個人情報なので、むやみに教えない方がいいです。」
「あ、そうなんですね…すみません。」
わあ…
少し返ってくるかもって思ってた言葉返ってきちゃったよ。
…でも、あれ？
むやみに教えない方がいいって思ってるのに
「どうして、お名前、教えてくれたんですか…？」
聞けば、ジジを撫でる手を止めないまま、笑みを滲ませる。
「おすそわけいただいてるし、名前を教えても問題ないと判断したので。」
「…あ、ありがとうございます…あ！私だけ知ってるのは不公平なので、私の名前も…」
"名前を知らない限り、Aちゃんとそのお巡りさんは、ずっとただの顔見知り、お隣さん止まりなんだよ？"
ユヨンさんから言われたこともあったし、彼に知ってもらいたくて、自分の名前を告げようとしたら
「Aさん。」
呼ばれた名前。
とくん、心臓が音をたてる。
なんで知ってるの？
疑問が浮かぶよりも先に、好きな人から名前を呼ばれることが、こんなにも嬉しいものだったことを思い出した。
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作者名：余暇
| 作成日時：2024年9月7日 0時
