ギャップ ページ3
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「え?隣の人警察官だったの?」
「そうなんです。昨日仕事帰りにお財布拾っちゃって、交番に届けに行ったら対応してくれたのが…お隣さんでした。」
「すごーい、そんなことあるんだ?」
仕事の空き時間。
同じ受付で働くユヨンさんといつお客様に話しかけられてもいいように、顔に笑みを張りつけた状態でお喋り。
ユヨンさんはすごく話しやすい人。
私のくだらない相談も親身になって聞いてくれるの。
大好き。
今回のお引越しも、物件選びからいっぱい相談しちゃった。
「でも感じ悪いんです。…お巡りさんって、もっと明るくて爽やかな正義感の溢れる感じだと思ってたのに。」
「まあ、警察官も人間だからね。感じ良い人もいれば、反対に悪い人もいるよ。でも、お隣さんが警察官ってすごく安心じゃない?番犬がいるようなもんでしょ?」
「番犬…」
「ふふ。なに、その難しい顔。」
「うーん、犬って感じしないなあと思って。」
「あ、そこ引っかかる?」
夕方。
マンションの階段の前まで帰ってくると、階段の陰から出てきた黒ネコちゃん一匹。
かわいい!
歩み寄れば、逃げちゃうかなと思ったのに、丸まって座り込んだネコちゃん。
…人に慣れてる?
「君、どこから来たの?」
しゃがんで聞けば
「大家さんの家から。」
え?喋った?
一瞬、ネコちゃんの顔見ちゃったけど、知ってる低い声。
顔を上げたら…白シャツを第2ボタンぐらい開けて着崩してる、お巡り…お隣さん。
「こ、こんばんは…」
彼がしゃがむと、ゆっくり体を起こしたネコちゃん。
伸ばされた白い手にすりすり顔を寄せ始めてる。
…わ、ものすごく懐いてる。
「懐かれ…」
懐かれてるんですねって隣を見た瞬間、視界に飛び込んできたネコちゃんを見つめる穏やかな横顔に戸惑う。
…こんな、優しい表情できる人なの?
ぼおっと見つめちゃってたら笑みがしまわれ、こっちに向けられた視線。
眼鏡の奥の目と目が合う前に慌てて逸らしたら、ふいに彼が提げてたコンビニ袋から缶詰を取り出す。
ネコちゃんにあげるみたい。
パカッと開いた缶詰、ネコちゃんの足元に置かれる。
「お食べ。」
返事するかのように、にゃあって一声鳴いてから、缶詰に顔を突っ込んで食べ始めたネコちゃんが可愛くて、ふふっと笑みを溢したら、彼のははって笑い声と重なった。
思わずまた彼を見たけど、気にしてる様子もなく、ネコちゃんに柔らかい眼差しを送り続けてる。
これが…世間でいうギャップってやつなのかな。
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作者名:余暇
| 作成日時:2024年9月7日 0時


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