はい、私が死体処理班の者です 2【名探偵コナン】

http://奇術師襲来 ページ5

虫の息でやっと自宅に到着


力仕事な為、体中が悲鳴を上げているがいつもの如く床で寝るのは変わりない


雑に靴を脱ぎ捨て鞄を床に放り投げた



『お疲れ私...』


労ってくれる相手は誰も居ないので自分で言う。27歳、虚しい今日この頃


『...？』


頭を空にして空虚を見つめていればベランダを区切る薄いカーテンが揺れている事に気付く


戸締まり忘れてたかな、なんて考えたが別の可能性が頭をよぎった



＿＿まさか、空き巣



一瞬で鳥肌が立ち壁に背をつく


落ち着け自分

こういう時は身辺の安全確認だ


何か使える武器...強いて言うなら丑の刻参りスタイルで左手にフライパン、右手にお玉を構えれば完璧だ


...空き巣よか怖いかもしんねぇ。大丈夫かな疲れてんのかな私


丑の刻参りスタイル一式なんて持って無いし、妥協してフライパンとお玉だけでカーテンに近付く



その瞬間、風に吹かれて舞い上がるカーテン


ベランダの手すりに白いマントをはためかせた男が月夜をバックに佇んでいた



「＿＿今宵、貴女をマジックショーへご招待に参りました」


モノクルから覗く瞳が真っ直ぐにこちらを捉えている


『...誰アンタ』

「おや、私の事を知らない方がいらっしゃるとは」


まずそこから降りろよ


ふむ、と顎に手を添えて全身真っ白は考え込み、妖しく口が弧を描いた


「月下の奇術師...と言えばお分かり頂けるでしょうか」



ま す ま す 誰


本当に誰お前...なんて疑いの目を向けていればお構い無しに喋り始めた


「私の名は怪盗キッド。街中で見掛けた貴女と身に付けた宝石に目を奪われ、今宵このような形で招待しに来た訳です」


こいつ中々キザ野郎だな。ばばぁにはトキメキなんてねぇが


それに身に付けた宝石って...あれか。ジンさんがくれたイヤリング


途端に一枚のカードと真っ赤な薔薇を差し出される


「私からの招待状。是非貴女に相応しいあの宝石のイヤリングを身に付けていらして下さい」

『行かねぇよ？？』


いつの間にかポケットに収まっていたカードと薔薇にガチ勢だ...と引き気味になった


「いえ、貴女は来ざるを得ない...。彼、江戸川コナンにこの事を伝えてくれれば、ね」


最後に意味深な言葉を残すと、重心をなくした体が後ろに傾き闇に消える


『っ、おい！』


手すりに慌てて駆け寄れば、落ちていった筈の野郎はハングライダーらしき物で空を飛んでいた


二度と来んなよとその姿を背にしフライパンとお玉を手に歩き出した

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