結婚を前提に、まずは離婚してください。【呪術廻戦】

01-結婚から半年 ページ1

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「ただいまー」





そう言っても、響くのは扉が閉まる音だけ。
いくら待ったって、おかえりの声は聞こえない。

徐に靴を脱いで玄関に上がり、少し長い廊下を進んで、やっとの思いでリビングのソファに倒れ込む。

1人で住むには、広すぎる家。


そんな結婚生活も、半年が経てば流石に慣れる。


今日はつい仕事に熱中してしまい、帰ってきたのは22時を回っていた。

夕飯を作る気力も食べる気力も残っていない。明日も朝から仕事だ、軽くシャワーを浴びてもう寝てしまおう。疲れ切った体に鞭を打ってなんとか起こし、風呂場でシャワーを浴びた。

髪を乾かすことさえままならず、ベットに潜り込んだ。



私は夫の名前しか知らない。
彼の名前だけは物凄く有名だったから、結婚をする前から彼の名前は嫌というほど耳にしていた。

一度も会ったことがないから、顔は見たことがない。
婚姻届は郵送で送られてきた。夫の書く欄は全て記入済で、私も書いてから1人で提出しに行った。

それから数日の間で、夫が手配してくれたこの高級マンションに住むことになった。

所詮は契約結婚、愛が無いのは承知だった。それでも、1週間に1回くらいは流石に顔を出してくれるんじゃないかと安易に考えていた。

その思いは見事に裏切られ、夫とは一度も顔を合わせないまま、半年が過ぎた。


金銭面では心配事はない。毎月夫が振り込んでくれる生活費用の通帳があるから。まあ、それはあまり使わないようにしているけど。私も自分で稼いでいるので。



好きな仕事をして、

何にも縛られずに自由に暮らしている。



普通の結婚とはベクトルが違うかもしれないが、私は幸せだった。

ただ、不意に過ぎる寂しさがあるのは事実だけれど。


明日の仕事の為に、すぐに眠りにつく。




一晩過ごすごとに、終わりの気配がはっきりと近づいてきている。






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