75-ありがとう ページ28
.
そこからはもう圧巻だった。
トラファルガーさんはもちろんのこと、ベポくんや他の皆も苦戦することなく敵を返り討ちにしていて。
2億の海賊とそのクルーの実力を思い知らされた。
ゴイルは全く歯が立たない。
トラファルガーさんは擦り傷の1つさえ負うことなく、あの屈強そうなゴイルを倒してしまった。
「(……すごい)」
これが本物の海賊なんだ。
ハートの海賊団の圧倒的な強さにゾクゾクと背筋が震えた。
さすがに2分以内ではないものの、それでもあっという間に戦いは終わった。
するとすぐにトラファルガーさんが、私が身を潜めていた船内に入ってきた。彼は早足でこっちに近づきながら「金はいくら必要なんだ」と問う。
「へ？」
「あのゴイルって奴、一応賞金首だったみてェだ。1億7000万の額が掛かってるらしい」
「！それなら足りる……」
「んじゃ、さっさと海軍に引き渡せ。それまではあの牢にでも閉じ込めとけ」
「うんッ……」
お金が足りる。
天上金を用意できる。
あとは何とか海軍に折り合いをつけて、引き取りに来てもらうだけ。
報われるの？
この息をすることさえ時間の無駄に思えた1年間が。
父が最後まで国を愛してくれていた事実も、ようやく国民に伝えられる。
泣いている暇なんかない。
唇を噛み、泣きたい衝動を堪える。
すぐに行動に移らないと。
城に戻ったらやらなければならない仕事がたくさんある。
でも、今は。
「……トラファルガーさん、」
身長の高い彼の目をしっかりと見て伝える。
「本当にありがとう」
心からの笑顔は随分と久し振りだったように思う。
演技とか打算とかそんなことは関係なく、自然と笑みが溢れた瞬間だった。まだ全部片付いたわけではないけれど、抑えられなかった。
彼は微かに目を見開いた。
そして「あァ」と僅かに口角を上げる。
「やっと笑ったな」
「……いっつも笑ってたけど？」
「胡散臭い笑顔ばっかだっただろ」
あ、バレてたんだ。
しかも胡散臭いって。失礼な。
レアにはなりきれてなかったというわけか。
「胡散臭いは言い過ぎじゃないの」と言い返そうとすると、彼は突然私の頬に両手を添えた。
真っ直ぐな目と視線が絡み合って、金縛りにあったみたいに体が動かなくなる。
腰を曲げて、徐々に近づいてくる整った顔。
「え、ちょっ何して……」
「るせェ。動くな」
息がかかるくらいの距離で彼は言った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 821人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱぅち(プロフ) - 宙さん» ありがとうございます…！！（ ; ; ） 新作の構想を練っています！もう少々お待ち下さい(^^) 最後までお読み頂きほんとに感謝でいっぱいです！ (2020年7月20日 0時) (
レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 完結おめでとうございます！次回のローさんも楽しみです(´∇｀) (2020年7月18日 21時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 恵那さん» お久しぶりです！無事完結して作者もホッとしております。笑 わわ、ローさんをもっと好きになって頂けたなんて嬉しすぎます（ ; ; ）書いた甲斐がありました！ 最後までお読みくださりありがとうございました！ (2020年7月18日 21時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - おそらまめさん» ありがとうございます…！完結後もお会いできて嬉しいです（ ; ; ）物語的にはこれでお終いですが、きっと2人の幸せはこれからきちんとした形になっていくのだと思います…！素敵な感想を頂けて光栄です。最後までお読みくださりありがとうございました…！ (2020年7月18日 21時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
恵那 - お久しぶりです！完結お疲れ様でした！！この作品に出会えて、ローさんの事がより好きになりました！本当にありがとうございました！！ (2020年7月18日 19時) (レス) id: 98e7f0577c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱぅち
| 作成日時：2020年4月5日 11時
