22-流れる血の説得力 ページ22
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食料調達チームがいなくなった船は、やけに静まり返っていた。この静寂な空間に刀を手入れする音が良く響く。
一通り終えたところで、にしても無人島かと溜息混じりに天井を仰いだ。
無人島じゃなければ、Aとはもう別れていた。
反実仮想の事実を思い描くと、心に鋭い痛みをもたらし、その痛みが冷気の塊となって留まり続ける。
らしくねェ、とは思う。
なんで仲間でもなんでもないただの女に。
……そう、所詮はただの非力な女。
脳裏に浮かんだのは、「私にできるでしょうか」と不安に曇った瞳。
あの瞳を思い出す度に湧き上がる感情は怒りなんて単純なものじゃない。憤り？いや、それもちょっと違う気がする。
おれがあの目を気に入ったのは、どんな酷い言葉を並べても、決して死ななかったから。例え迷いが見えたって最後には必ず吹っ切れて、晴れた目でこっちを見返すもんだから。
興味を持ってしまった。
どんな面白い奴なのか知りたいと思った。
この気持ちを裏切られたんだ。
やはりただの平和ボケした女だったのだと、そう結論せずにはいられなかった。
わかった、怒りなんかじゃない。
失望だ。
興味を持っただけでなく、知らず知らずのうちに期待までしてしまってたんだ。
Aという人物の核に。
数人の騒めきが近づいてくる。
食料調達チームは何個かに分かれているが、その中の一つが帰ってきたのだろう。
机に置いていた帽子を被り、甲板に出る。
案の定、山菜入れのリュックを満杯にして、更には狩ってきたと思われる大型動物を引きずって帰ってきたクルー達がいて。
ベポが「キャプテーン！」と船縁に寄りかかるおれに大きく手を振った。
ベポがいるってことは、……。
無意識に目はアイツを探してしまった。
「ただいまです！トラファルガーさん！」
いつかのように敬礼をしながらベポの背からヒョコッと顔を出すA。彼女は気絶しているサイを、他のクルーに手伝ってもらいながらも一生懸命引きずっている。
「食料ちゃんと確保してきました！」と目を輝かせて語る彼女の肩からは赤い血が流れていて。
その血が、すべてを物語っていた。
怒りとか失望だとか、そんなもんは全部一瞬で吹き飛んで。
ああそうか、と納得した。
Aは、海の上で命を賭ける覚悟があるのだ。
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ぱぅち(プロフ) - kiさん» わわ、ありがとうございます…！コメント頂けて本当に嬉しいです(^ ^)続編ではどんどん種明かしして参りますので…笑 続編でもよろしくお願い致します…（ ; ; ） (2020年4月5日 11時) (
レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ki(プロフ) - とても良くて思わず、初めて感想を書いてみようと思うほどでした。最後のシーンに驚きすぎて続編が楽しみです！無理せずに頑張ってください。ワクワクしながら待っています！ (2020年4月1日 3時) (レス) id: d59bd8fff6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 紗さん» あたたかいお言葉ありがとうございます…！（ ; ; ）まだまだ未熟ですが、文章を褒めてくださると本当に嬉しいです！続編も頑張ります！ (2020年2月4日 21時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
紗(プロフ) - 第一章おつかれさまでした！！表現の仕方とか素敵でとても好きです！更新ゆっくりでいいので、楽しみに待ってます！ (2020年2月1日 18時) (レス) id: d2cf8ed97e (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 氷屋さん» コメントありがとうございます！ほんとに些細な描写が繋がっていったりするので、気がついてもらえるととても嬉しいです(^^) これからも不器用なローさんを描いていこうと思います！頑張ります！ (2020年1月22日 22時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年9月28日 18時
