36-約束 ページ36
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船長が熱い瞳で語ったのは、紛れも無く“私”のことだった。
益々泣き止まなくなった私に、彼は困ったように舌打ちし、「泣くな面倒くせェ」と私の頭をがしがし撫でる。
乱暴な口調とは裏腹に、不器用な手は壊れ物を扱うかのように優しくて。その手が私をどれだけ好きか、物語っていた。
「……んで泣くんだよ、」
「……嬉しいから」
「あ？」
「船長が私を好きって言ってくれて嬉しいから」
服の袖で強引に涙を拭き取る。
摩擦で目がヒリヒリする。きっと少し腫れてるな。
好きな人の前ではこんな顔見せたくないけど、手をどけて彼の方を見る。
すると面食らった顔をしていたものだから、張り詰めていたものが切れて、小さく笑ってしまった。
船長でもこんな顔するんだ。
「お前、それは……おれの言葉が嬉しいっつーことは、つまり、お前も……」
船長が好きだと言ってくれたから、もう迷わない。
彼の手を取り、両手で優しく握る。
大好きな貴方に伝えたい言葉は一つだけだった。
「船長、私はさっきも言った通り、皆と一緒にゾウで貴方を待ってます。船長とゾウで会えたら、その時に答え合わせをしましょう」
「……答え合わせ？」
「はい。私が船長をどう思ってるか……その答えをその時に言わせてください」
遠回しな約束だった。
死ぬつもりでいないで、ちゃんと帰ってきてって。
だって皆、皆が彼を信じているから。
この船に戻ってくることを、信じているから。
「だから、」と続ける。声が震えた。
「必ず……帰ってきてください」
船長は何も答えなかった。
ただ、彼の口元には僅かに微笑が浮かんでいて、返事の代わりに私の瞼に口付けた。
彼の手を握る力が自然と強まる。
ゆっくりと時間を掛けて、船長がようやく口にしたのは。
「おれに命令するな」
この夜を最後に、船長はしばらく別行動を取ることになった。
彼が船を降りる際、クルーは誰も別れの言葉を言わなかった。「待ってますからね！」「必ず来てくださいよ！」等と前向きに送り出して。
船長のいなくなった船を出す直前、甲板から彼を見ていると目があった気がしたけど、特に言葉を貰ったり、笑顔を見せてくれたりはしなかった。
それで構わなかった。
私には、船長が好きだと言ってくれた記憶が残っているから。
一つだけ、願うことは。
ペンダントを握り、目を閉じる。
お願いお父さん、船長を守って。
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涼野紫乃(プロフ) - 完結おめでとうございます！作者様のローオチの作品は他にも読ませていただいてますが毎回話の構成、終わり方が最高で泣かされてしまいます。新作も絶対読みます！これからも頑張ってくださいm(_ _)m (2020年8月16日 8時) (
レス) id: 5f142ceaa5 (このIDを非表示/違反報告)
てい。(プロフ) - 完結ご苦労さまです！更新まだかなと楽しみに思えるほどこの小説が好きでした！1番が気になっています、気になりすぎて早く読みたいくらいですが…これからも頑張ってください！応援してます (2019年9月24日 18時) (レス) id: 6af5281e1b (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 皆様ご協力頂きありがとうございました…！一人一人にきちんとお返事したいところですが、有り難いことに多くの方にご意見をもらえて…泣 でもコメントや感想はすべて読ませていただきました！本当に温かいお言葉をもらえて嬉しいです！今後もよろしくお願いします…！ (2019年9月24日 17時) (レス) id: fbe06363c9 (このIDを非表示/違反報告)
ぴろぴろ(プロフ) - 完結お疲れ様です★遅くなりましたが、3番が読んでみたいです(*´∀｀) (2019年9月24日 11時) (レス) id: 5ce8d72b22 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - 2.3どちらも捨てがたいです(ﾟ´ω｀ﾟ)！完結お疲れ様でした！ (2019年9月24日 1時) (レス) id: e1ea64eec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年9月8日 18時
