34-苦しいほど愛しい ページ34
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初めはなんだコイツって思ってた。
濃い隈があるし、目つきは悪いし、
ついでに態度も悪いし、
面と向かって興味無いとか言ってくるし。
どちらかというと苦手な方だったのに。
「……今言うんじゃねェよ、んなこと。人の気も知らずに……」
ぎゅうぎゅうに締め付けてくる手が、
小さな声量に反して想いの強さが伝わってくる声が、
生きてる証である彼の鼓動が、
……今では全部全部、愛しくて堪らない。
船長は胸板に私の顔を押し付ける。
密着して伝わってくる体温。
私はこの熱を、知っている。
「そのまま聞け、A」
耳に響く心音は、やや速い。
「お前は連れて行かない。それは変わらねェ」
「なんで……」
「最後まで聞け。……これは、“船長”としてじゃない。おれ“個人”としてのケジメなんだ。んな我儘にクルーを巻き込むわけにはいかない」
船長、わかってるよ、
私が何と言おうと貴方は意見を曲げない。
そんな事、わかってる。
私はただ、彼が知らないところで死んでしまうのが嫌だった。死ぬときは一緒に……ううん、彼が少しでも生き長えられるように、この身が先に滅んでも構わない。
この両手では抱えきれない想いを告げたところで、彼を困らせてしまうだけ。
うん、いつまでも引き止めちゃうのは、彼の顔に泥を塗ってしまう。
男がケジメをつけると言ってるんだ、ならばもう口を挟むことはできないじゃないか。
「…………わかりました、船長」
興奮していた頭が冷えていく。
そっと彼の胸板を押し返し、顔を上げて目を合わせる。
揺れのない瞳に、迷いなんて微塵もなかった。
クルーである私にできるのは貴方を信じることだけ。
「私は船長を待ってます、皆と一緒に」
あァ、と船長は満足気に笑む。
もう話はついたので頃合いかと腰を上げれば、「待て」と言われたので再び座る。
船長は膝に乗せた拳を見つめながら言った。
「……お前に言われて、あれからずっと考えてたんだ」
「私に、言われて……？」
「お前が『自分を好きなのは、コラさんと重ねて見ているから』みてェなこと言っただろ」
「…………あー、まぁ、はい」
そこ、一々掘り返さなくていいんだけどなあ。
「結論から言うと」と船長は足を組む。
「確かに、ナギナギの実を食ってるって知らなかったら、お前の存在に気づきもしなかっただろうな」
突きつけられた現実。
胸が、痛い。
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涼野紫乃(プロフ) - 完結おめでとうございます！作者様のローオチの作品は他にも読ませていただいてますが毎回話の構成、終わり方が最高で泣かされてしまいます。新作も絶対読みます！これからも頑張ってくださいm(_ _)m (2020年8月16日 8時) (
レス) id: 5f142ceaa5 (このIDを非表示/違反報告)
てい。(プロフ) - 完結ご苦労さまです！更新まだかなと楽しみに思えるほどこの小説が好きでした！1番が気になっています、気になりすぎて早く読みたいくらいですが…これからも頑張ってください！応援してます (2019年9月24日 18時) (レス) id: 6af5281e1b (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 皆様ご協力頂きありがとうございました…！一人一人にきちんとお返事したいところですが、有り難いことに多くの方にご意見をもらえて…泣 でもコメントや感想はすべて読ませていただきました！本当に温かいお言葉をもらえて嬉しいです！今後もよろしくお願いします…！ (2019年9月24日 17時) (レス) id: fbe06363c9 (このIDを非表示/違反報告)
ぴろぴろ(プロフ) - 完結お疲れ様です★遅くなりましたが、3番が読んでみたいです(*´∀｀) (2019年9月24日 11時) (レス) id: 5ce8d72b22 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - 2.3どちらも捨てがたいです(ﾟ´ω｀ﾟ)！完結お疲れ様でした！ (2019年9月24日 1時) (レス) id: e1ea64eec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年9月8日 18時
