6つのあるばむ そのさん

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眠ることなんてできなくて

布団に潜って幼児のように丸まっても

夢を見ることはできなかった。







いつもより1時間早く部屋を出て

よしくんの朝ごはんの準備をする

温めて食べてください、とメモを残して部屋に戻る


やっぱりまだよしくんに会えない






リビングからそれぞれの色のドアを見つめる

初めてここにきた時は知らなかったなあ


家にいる時どんな風に笑うのか

お箸の使い方とか、寝癖とか

歯磨きしてる時とか

近くで見る指とか足首とか鎖骨とか

私だけに向けてくれる言葉とか表情も

全部、知らなかった



どこまで踏み込んでいいのか、も。

全然分からなくて

知らなくて

間違えてしまった





やっぱり何度も准くんの声と表情が繰り返されて

何度も胸を締め付ける

痛い

忘れたいことほど忘れられなくて

火傷の痕みたいに脳裏に焼きついていくんだ








「…ごめん、なさい」








声に出してみても、届くはずもなくて

余計に心が痛くなった


ごめんなさい、ごめんなさい

小さい頃からよく使ってきた言葉で陳腐でありふれた言葉



どうしたら届くだろうか

この気持ちごと

言葉はあまり万能じゃないから

予期せぬ捉え方をされたり、

言えなかったことまで伝わったり

何ひとつ伝わらないこともある







素直に面と向かって話せたらいいのに

小さい時からずっとそう


自分が良かれと思って否定されると拗ねてしまう

そこにはその行動に自分なりの自信とか過信があって

喜んでくれるって思ってるから

そうならなかった時喜んでくれるって思ってた自分が滑稽で恥ずかしくて情けないから


そこにある感情に触れたくなくて


遠ざけてしまうんだ









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