アリス、怒る 01 ページ45
パシッ｡
ハットは部屋に鳴り響いた音に目を丸くした｡
｢……触らないで｣
それはAが今にも触れそうな彼の手首を掴んだ音｡
彼女はギロリとハットのことを睨みつけていた｡
ドクリと心臓が音を奏でるのが、ハットは自分でも分かった｡それでも彼は渇いた笑いをこぼして彼女より優位に立とうと努める｡
｢どうしたの、アリス｡この手を離してくれないかい?君に触れたいんだ｣
｢嫌｡Aの頭を撫でていいのは、ボンゴレの皆だけなの｣
芯の通った鋭い視線｡Aの瞳に吸い込まれる寸前、ハットは意識を引きずりこまれそうになったことに気づいた｡
まずい｡
今度そう思ったのはハットの方だった｡
｢危なかったよ、騙されるところだった｡帽子屋さんったら昔から本当みたいなでたらめ話が上手なんだもん｡本当にAはアリスで、ハートの女王には勝てないのかもって思っちゃったじゃん｣
｢な、何言って、ぐっ……｣
うめき声を上げ、ハットはその場にうずくまった｡
Aは前に突き出した右足をスッと下ろすと、軽く横に跳ねて彼から距離をとる｡そして蹴られた腹を抑えるハットを冷ややかに見下ろした｡
｢Aはね、もう女王の言いなりにはならないって決めたの｡だからあなたの言うことは間違ってる｣
Aの言葉を嘲笑ってやろうと、ハットは咳こみながらふらふらと立ち上がった｡
｢笑わせてくれるなよ!現にアリスを捨てきれてない君が、女王に抗えるはずがないだろ!｣
無理やりニヤリと口角を上げたハットにAはただ一言、分かったとだけ言って部屋の隅へと歩き出した｡そこにはバジルが用意した数多くの武器が詰められたバッグ｡
数ある武器の中から彼女は鎌を取り出すと、黙って髪を掴み、そして｡
｢待て、何を｣
ばっさりと、ためらうことなく、Aはその長い金髪を刈りとった｡彼女の手からさらさらと髪が流れ落ちていく様子が、まるで映画のワンシーンのようでハットは思わず見とれてしまった｡
｢これでいい?｣
｢……は｣
｢これでもうAのこと、アリスって呼ばないよね?まだ何かあるなら、なんだってしてやるけど｣
まっすぐ見つめてくる彼女に、ハットは本気なんだと思い知らされた｡
｢もうAはアリスじゃない｡もう二度と、アリスって呼ばせない｣
知らないうちに強くなったな｡もう敵わない、のかもしれない｡
はっきり言いきったAを見てハットがそんな風に思っていると、ドアが開く音がした｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 42人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
futureblue�鏡�(プロフ) - ちささん» 初めまして｡コメントありがとうございます!ツナにはかなりお世話になっています,ツッコミにも親バカにも回ってくれるので｡素敵と言っていただけて嬉しい限りです｡できるだけ早いペースでの更新頑張ります!ちさ様もお身体にはお気をつけてくださいね｡ (2019年12月17日 19時) (
レス) id: 495c86097b (このIDを非表示/違反報告)
futureblue�鏡�(プロフ) - まくすうぇるさん» 初めまして｡コメントありがとうございます!そうですね,大人びているところがあるとはいえまだ8歳児なのでそんたくできないお年頃です(笑)多分順位としたらツナ>>>ヒバード>骸ってところですかね｡ (2019年12月17日 19時) (レス) id: 495c86097b (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。作中の綱吉と同じ気持ちで毎回読ませて頂いております← すごく素敵な作品でもう更新が楽しみで楽しみで仕方がないです！お体に気を付けて無理せず更新頑張ってください！ (2019年12月16日 23時) (レス) id: 6d1f2ce8ab (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - 主人公の関心 骸＜ヒバード ぷぷっ・・・www (2019年12月16日 19時) (レス) id: 34699431ad (このIDを非表示/違反報告)
futureblue�鏡�(プロフ) - 成田優吾さん» 初めまして｡コメントありがとうございます!何回も読んでいただけてるなんて嬉しさの極みです｡なかなか読者の方の声を聞くことができないので、面白いと言ってもらえて幸せです｡早いペースで更新できるよう頑張ります!成田優吾様もお身体にはお気をつけてくださいね｡ (2019年12月9日 18時) (レス) id: 495c86097b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年11月22日 16時
