アリス、現る ページ2
｢申し訳ございません、10代目｣
無線機から獄寺の本当に申し訳なさそうに謝る声が聞こえてくる｡
｢そんなに謝らないで、獄寺くん｡その子は今どうしてるの?｣
｢山本が相手してます｣
山本なら大丈夫だろう｡昔から面倒見がよかったし｡
そう思い、その子を本部まで連れてくるように言って電話を切った｡
ふう、と息をつく沢田綱吉21歳｡
彼のことを10代目、ボンゴレデーチモと呼ぶ者も多い｡また昔のままツナ、沢田と呼ぶ者もいる｡
数年前、突然やってきた赤ん坊リボーンにあれよあれよと導かれ、ツナはボンゴレ10代目の座に就いた｡
ボンゴレのボスになんてならない!と強く拒んでいたツナであったが、高校卒業後イタリアに飛び、正式にボンゴレを受け継いだ｡
継承したばかりの1年間はゴタゴタが絶えなかったが、3年目の現在では比較的に平和が保たれている｡
それにしても、とツナは獄寺からの報告を思い返す｡
路地裏に現れた幼き少女｡
ここらの子供は親に"路地裏には行ってはいけない"と言われている｡好奇心でうろついていたのだろうか｡
さらにその子は自分がアリスで、時計うさぎを追いかけていたと言うのだ｡しかもおとぎ話に出てくるアリスの行動になぞらえて話したのだ｡
また彼女は水色のワンピースに白いエプロンを身に付け、頭には大きなリボンを着けて……といった具合に多くの人が思い浮かべるであろう格好をしているらしい｡見た目もアリスっぽいとか｡
なのに、話す言語は日本語｡
本当に不思議だらけだ｡
まあ2人が連れてきてくれるんだし、深く考えるのは止めておこう｡
……なんて楽観的に考えていた少し前の自分を殴ってやりたいと思った｡虚しくなるだけだから実際にはやらないけど｡
山本が抱き上げてきた彼女は、想像以上にアリスだった｡見た目も中身も｡
やって来て開口一番に放った言葉が"時計うさぎさんは?"
獄寺に失礼だと叱られているにも関わらず、彼女の口からは言葉が溢れてとどまることを知らない｡
ここはお城なの?ハートの女王はどこ?トランプ兵は?
本当に彼女はアリスで、ここが不思議の国なのではないか｡そんな風に錯覚してしまうことはさすがになかったが、あまりにもおとぎ話通りなのでツナは逆に取っ掛かりを覚えた｡
この子は何かを抱えている｡
なんとなくだけど、ツナはそう思った｡
｢おい、いい加減に｣
｢待って、獄寺くん｣
獄寺は素直に口を閉じた｡
山本は自称アリスを抱き上げたまま、ツナを見つめる｡
｢その子と2人で話がしたい｣
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年5月27日 19時
