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「新しく入ってくれる人ですか?」



中本書店の前に来ると、大学生であろう女の子が話しかけてきた。



その子は中本書店と書かれた焦げ茶のエプロンをつけている。



「はい、面接に来た者です」



「おじいちゃーん、相楽さん、来ましたよー」



…おじいちゃん?



「ちょっと待ってて、」



お店の中から声がして、やがて中本さんがやってきた。



「相楽さんですね」



そう言って今あるシワをもっと増やして笑った顔は、私が学生だった頃と全然変わっていない。



「はい」



なんだか嬉しくなって思わず笑った。



「中に行きましょう」



中本さんに促されて、奥の部屋まで入っていく。



椅子に座って待っていると中本さんは何やら手に持ってきた。



私の前にティーカップが置かれ、いい匂いのする
お茶が注がれる。



「はい、ダージリンティー」



「ありがとうございます」



お礼を言ってカップを口に近づけて一口飲む。



「美味しい…」



「ありがとうね」



なんだか感動してカップの中のお茶をしばらくの間眺めていたら…



「相楽さん、採用!」



「えっ?」



いきなり中本さんが採用と言った。



えっ、私採用されたの?



訳が分からず中本さんの顔をマジマジと見つめていると、中本さんは笑いながら話し始めた。



「いや、最近一人辞めちゃってね、僕だけになっちゃってたんだよ。心夢(みゆ)…店の外で掃除してた孫が手伝ってくれてたんだけどね、いくら人がそんなに来ない本屋でも、さすがにこれじゃあ人手が足りてなかったからね、相楽さんが来てくれてほんと助かったよ」



ああ、だからすぐ採用ってなったんだ。



「それに相楽さん、昔よく来てくれてただろう?」



「覚えてくれてるんですか!?」



驚きと嬉しさから、思わず体が前のめりになる。



「もちろんだよ。よく来てくれて、心夢の遊び相手にもよくなってくれてたんだから。それに梶西先生が好きだって言ってたの、よく覚えてるよ」



「うわあ、よく覚えててくださってる!そうです、私梶西先生のあの究極のミステリーが一番好きです!もう、最後に会ったのは随分と前のことだったから、てっきり覚えてないかと…」



「先週入ったばっかの梶西先生の最新作、あるよ」



「ほんとですか!買います!」



なんだか仲の良い友達みたいに、本の話で盛り上がった。

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(プロフ) - 修学旅行ハプニングあったみたいですか、楽しめて良かったですね!!私も田舎に住んでるから、東京行ったら確実に迷子になっちゃう(笑)テストもお疲れ様でした! (2019年6月20日 22時) (レス) id: ff8c7fad23 (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - 雅さん» 受験生といってもまだ6月なんで、全然更新していけると思います!また、お話楽しく描いていきますね^_^ (2019年6月20日 22時) (レス) id: abcbda1e9b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - いつも読ませていただいてます!受験生大変ですよね。無理せず、暇なときに更新してくださいね。 (2019年6月3日 21時) (レス) id: ff8c7fad23 (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - 大丈夫ですかー(笑)でも楽しみながら読んでもらえてるようで、嬉しい限りです^_^ (2019年5月19日 13時) (レス) id: abcbda1e9b (このIDを非表示/違反報告)
あやかちん(プロフ) - やぁぁっちゃった///ふぅぁぁぁ!!((テンションおかしい (2019年5月19日 11時) (レス) id: 34fff6315e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さら | 作成日時:2019年4月16日 21時

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