ギュッとして！

２０ ページ20

「ふう…」



深呼吸して、家を出た。



もうそうしないと胸が苦しいから。



川西さんに背中を押されて、やっと決心できた。



終わらせるって。



やっと終わらせれると思う一方、終わらなかったらどうしようという不安もあった。



それに今日はあの事件があってから、初めての出勤日。みんなの視線が痛いだろう。



考え込み過ぎて頭がおかしくなりそうになっていると、いつのまにかいつも降りる駅に着いていて、電車からホームに出た。



ホームから出て、会社への道を歩く。



永遠に会社へ着かなければいいのに。



そんな風にも思った。



でもそんなことはあり得なくて、すぐに会社に着いてしまった。



逃げ出したくなったが、「早く入れ！」と自分に言い聞かせてドアを開けて中に入った。



みんなの視線が本当に痛い。



「相楽さん、退職願は持ってきたの？」



「…はい…」



嘘の退職願いを渡した。



「あー、これでやっとあなたがいなくなるのね。これ、課長が来たら渡しといてあげるから。さあ、さっさと仕事して、机の上とか全部片付けな」



「…」



「『はい』は？」



「はい…」



自分の机に向かって、ノートパソコンを立ち上げた。



震える手でメール画面を立ち上げる。



そして、周りの人に見られないように、家で打った告発メールを課長の上司に送った。



…送ってしまった。



溜め込んでいたものがいっきに流れ出たような気がして、思わず机に突っ伏した。



『これで、終わる』

２１→←１９

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す