過去の想いは (ページ5)

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「いや何を思ってるのか知らないけどさ」

渉は言う。

「どうせさ、太輔はいろいろ我慢してんだろ？べたべたしないのが2人の売り方かもしれないけどさ、俺らの前くらいでは普通に喋ったっていいじゃん」
「いやだけど……」
「好きなんでしょ、ミツのこと」
「いやもう好きじゃない」

そう言うと、渉はどういうこと、と目を見開いた。

「おれね、もう、きたやまのこととっくに諦めてるの。好きでいるのやめたの。好きでいるとね、苦しいから、もうやめたの」
「あのね、」

渉は俺の言葉に被せるように、優しい声を出した。

「みっちゃんね、たまに俺に、ふじがや元気？なんて訊いてくるのよ、自分で訊けばいいじゃんって俺が言っても、そういうのあいつは良く思わないからって言うの」
「可愛いよね。自分で太輔に話しかければいいのにさ、しつこくして太輔に嫌われるのが怖いんだって」

渉の口は止まらない。こういうときに限って全く噛まないのが恨めしい。

「ふじがやがどう思ってるのか分からないけど、俺はふじがやのこともっと知りたいんだ、って言ってたよ。俺が背中預けてばっかりで恥ずかしいけど、って。ふじがやもたまにはおれのこと頼れよ、って。」
「はは… チビのくせにな」

何度も拭っても、涙は止まらなかった。

「だからさ、太輔、」
「わかってる。ありがとう渉」
「そっか、分かってもらえたなら良かった」

そう言って渉は笑った。

きたやま。俺はもう1度あなたのことを好きになっても良いですか。またあなたのことを想っても良いですか。お互い、背中を預け合おうよ。そんで、たまには顔を見合わせて、笑い合おう。

－Fin－