煉獄さんと恋がしたい (ページ5)

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戯れページ5

｢杏寿郎、頭を撫でてみてもいい？｣
｢？ああ！構わないが何故だ？｣
｢貴方の髪ってうねっているでしょう？どんな心地なのかしらと思って｣
杏寿郎を少し強引に引き寄せて私の膝へ頭を載せる。
触れると、少しだけ杏寿郎から緊張が伝わってきた。
こうしていると母になったようだ。
｢…杏寿郎……お父様のこと、きらい？｣
つい口をついて出た。
｢…嫌われているのは、どちらかと言えば俺だろう｣
いつになく大人しくなって杏寿郎はそう言った。
｢…お父様があなたの事を嫌いでも、私は誇りに思うわ。あなたの事を｣
自分でも驚くほど言葉がスラスラ出てくる。
｢…杏寿郎…怪我、しないでね｣
少し寂しくなった。
何故だかその時、彼がとても遠くへ行ってしまうような気がしたからだ。
｢私…羽織は直せても…傷は治せないから｣
ふと気づくと、私は涙を流していた。
杏寿郎が苦笑するように起き上がって私の涙を拭いた。
｢なぜ故に泣く？…おかしいな…君は強い女性だと思っていたのだが｣
｢…弱いから。本当は弱いから強くあろうとしているだけ…でも今真に思うわ…今は…私だけの為ではなくて、あなたの為にも強くなりたい…涙なんて…見せたくないわ…｣
震える声に杏寿郎はいつもの様に笑った。
｢泣くといい！俺の為にではなくとも！それが弱い証拠にはならない！｣
私はそれを聞いてハッとしつつ笑った。
｢…貴方もね、杏寿郎…｣
すると面食らったように杏寿郎が止まった。
言葉の意味を少し考えているようだ。
｢杏寿郎…帰ってきてね。ちゃんとここに、帰ってきてね｣
袖を引くと杏寿郎はうぬ！とまた言った。
｢帰ってくるとも！今度は土産も持参しよう！｣

(そんなもの無くてもいいわ。ただ無事で…ここへ帰ってきてね)

涙のせいか言えなかった。